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Side.ディベル

 俺は驚愕していた。


 ただの人間に模擬戦とは言え、四割の勝率を取られたことに。これが俺だけの結果ならばまだ、納得も出来た。しかし、ラントと組んで戦った上での結果だ。だが不思議と悔しさは無い、あるのは全力でぶつかり合えるラント以外の相手への興奮、ただそれだけだった。


 俺達に対して勝率を四割取るだけなら人間にも一握りは居る。だから、それだけなら良かった。だがアイツは人間の無し得なかった事をやって退けた。


 フレイキード様に対して傷を付けたのだ。名のある魔獣ならば不可能では無いが、人間のそれもまだ成長期の奴がやったのは驚いた。あの時のラントの顔は見物だった。正直思い出すだけで笑えてくるぜ。


 「サーシャか…俺も強くなんねぇとな!」


 「ディベル、こんなとこでどうしたの?人化まで使って」


 「え、おわぁ!?ってラトかよ~、びっっくりしたぜ~!」


 本当に焦った、サーシャに人化を見られたかと思った。俺達魔獣の内、知能を持つ奴が居る。それは長い年月を重ねるか、特殊な生まれの奴だけだ。その中で絶対に守る決まりがある。


 一つ、人化を家族や仲間、特別な相手以外に見せない


 二つ、人や知能ある魔獣とは極力戦わない


 三つ、決して仲間を裏切らない


 この三つを守るのが知能ある魔獣の掟だ。何時からあるモノなのかは分からないが、俺の知能が芽生えた時に教えてくれたのはラントだった。ラントはフレイキード様から教わったらしい。だから、人化は運命の相手にしかし見せないと決めている。


 「サーシャを狙うなら私もライバルだからね?」


 サーシャに人化を見せるか見せないかで悩んでいると、ラトが俺の思考を読み取ったかの様に言葉を発した。


 「い、いや!そんな、つもりは、ないぞ!?」


 「そう?ならいいんだけど」


 見透かされたような感じがしたが、今それを掘り下げると墓穴になる気がしたのでやめた。


 「そうそう、ラントがサーシャに人化見せるって言ってたわよ?」


 「え!?まっ、えぇ!?」


 まずい、ラントがその気になったのだとしたら、俺はサーシャの気を引くチャンスもなくなっちまう。


 でも俺はどうしたいんだ?

 サーシャが格好いいと思ったのは事実だ。だが、好き嫌いってのは俺には良くわかんねぇ。だけど、ラントやラトに取られるのは気に食わねぇ。ああ!俺はどうしたらいいんだ!?


 「早くしないともう見せてるかもしれないわよ?」


 「……」


 「タイミングを失って後悔するよりも、思いきってやってみた方が私は気が楽だと思うわ」


 「悩んでも答えは出ねぇよな…俺、考えるの下手だからなぁ。…わかった、行ってくる!」



 答えは決まった。たぶん俺は、サーシャが好きなんだ。離れたくなくて、アイツが進む道を一緒に歩きたい。この感情が恋なんだろう。


 ディベルと言う名前を貰って生きてきて初めての感情。折り合いの付け方がわかんねぇが、ラトに後で相談すれば何とかなりそうだしな。



 ラトの言葉で吹っ切れた俺は、サーシャの元に走り出す。後ろで微笑みながら手を振るラトが見えた。





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