再会とこれから
『そろそろいいか ?』
俺とラトが二人で再会を喜びあっていると、いつの間にか近くまで来た黒獣が声をかけてきた。ビクッと体を縮こまらせてどちらともなく離れた。
『すまんな、再会を邪魔したみたいだ。続けてくれ』
少し申し訳なさそうに黒獣がそう言って離れようとする。
「待ってくれ、いいって気を遣わなくて」
「え、ええ、フレイが気を遣う事ではないわ」
『そうか ? なら、話をしようか』
「話し ? 」
『ああ、お前に修行をつけてやる』
嘘だろ、あの話しまだ続いてたのかよ。あの時の戦闘で有耶無耶になってくれたと思ったのに。
『ラトを殺したのは我では無いし、そもそもラトは死んでいない。つまりお前は我の弟子になれるな』
なんだ、その超理論。さっきまで散々煽って、殴り合ったのに黒獣は気にしていなのか。なんだか、男としての器のデカさで負けた気がした。
「サード、貴女何を勘違いしてるのか分からないけどフレイは雌よ ?」
「え"」
ラトに衝撃の事実を告げられて俺が、変な声を出していると、黒獣は心底楽しそうに笑っていた。そんな、黒獣を見てなんだか気が抜けてしまった。変に警戒している俺が馬鹿みたいだ、もう一度話を聞いてみるか。
「コホン、それで、俺が弟子になるメリットは何だよ」
『乗り気になったのか ? まあいい、お前のメリットは強くなれる事だ、そして我のメリットは暇を潰せる事だな』
「それだけなのか ?」
『ああ、それだけだ。我はまず寿命が無い、だから暇を潰すのは値千金の価値があるのだ』
なんとも胡散臭い話しに聞こえるが、黒獣の言葉は真剣味を帯びていた。数秒の沈黙の後、俺黒獣の提案に乗る事にした。
「……わかった、その提案受けるよ。そもそもラトが生きてる時点で俺の旅は終わったも同然だからな」
『そうか、では飯にするか』
あれだけ必死に誘っていたのに受けた後のあっさりとした物言いにビックリしたが、歩いていく後ろ姿を見て我慢して威厳を保とうとしているのがわかった。
ブンブンと尻尾が揺れていたのだ。
黒獣の後ろ姿を見て微笑んでいるとすぐ横までラトが来ていた。
「サード、修行受けてくれてありがとう。フレイったら何時もつまらなさそうにしていたから」
「そうなんだ、あんまり想像つかないな」
「あんなに楽しそうなの初めて見たの。だからありがとう」
そう言ってラトは足取り軽く黒獣の後を追い始めた。久し振りに見たラトの笑顔にドキッとしながら、悟られないように後を追う。これまでの悩みや葛藤が嘘のように晴れていた。
今日は良く寝れそうだ。