再会
「あなた誰 ?」
ラトとおぼしき女性にそう聞かれ何と答えたものかと考える。
ここで俺はサード・ライフォードだと答えるのは簡単だ。素直に答えた所で信じてくれないと思うが。だからと言ってラト(そっくり)に嘘を付くのは違う気がする。うーんと頭を捻り折衷案を出そうとしていると、何を思ったのかこちらに近付いてきた。
勝手に得心がいったと言う顔で頷きながら俺に話し掛けてくる。
「わかったは、貴女、追い剥ぎに会ったのね !」
「あ、違います」
状況からして余りにも吹っ飛んだ意見に俺は、反射で否定してしまった。そのせいで、自信満々に答えた意見が否定されたラトは、顔を真っ赤にしてこちらを睨んでいるし、俺はそんなラトの顔が怖くて見れない。場の雰囲気は再会早々、最悪になってしまった。そこから互いに一言も喋らず(俺は怖くて話せないだけ)最悪な雰囲気と共に時間が過ぎていった。
「あの~、さっきのはその~、すみませんでした…」
「ふんっ」
このまま雰囲気は良くないと思い話し掛けてみたが取り付く島もない。でもその態度を見れば見る程、彼女はラトなのだと確信する。もう会えないと思っていたし、何度もあの時の事を後悔した。しかし実際は生きていたし、こうして元気に過ごしている。たぶん黒獣が守っていたんだろう。あいつは嫌いだけど、ラトを守った事に関しては感謝しかない。考えている内に、感情が溢れてつい言葉に出てしまった。
「生きてたんだな、ラト…」
「え、何で私の名前知ってるの ?」
咄嗟に口を塞ぐ、だけど遅かった。俺の呟きはラトに聞こえたし、静な森の中に二人だけの状況では無かった事に出来ない。
「もしかして、サード… ?」
今の俺は姿も性別も違う、どうやっても男の頃の俺に結び付く事は無いと思っていたし、何となくラトと再会したのに喜び切れなかったのはそれが原因だった。しかし、俺にそう問い掛けたラトは確信めいた物を感じているような面持ちだった。
「えっと、うん、俺だよ、サード・ライフォードだよ」
「ッ……」
気恥ずかしくなりながら答えるとラトは、疑うことも姿の事を問う事もせず抱き付いてきた。
ここまでだとは思っていなかった俺が硬直していると、啜り泣く声が聞こえた。また、何も話さない時間が訪れたが、今度は再会を噛み締める沈黙だ。双方抱き合ったままゆっくりと時間だけが過ぎていく。
いつの間にか泣き止んだラトの顔が真っ赤になって照れていたのは言わぬが花かな。