再会と初めまして
鳥の鳴く声に起こされ目を開く。
昨日は黒獣と戦って、負けてそのまま寝ちゃったんだな。動かす度に固まった関節がパキパキと音を鳴らす、心地好く伸びをしながら横を見るとギョッとした。
横に黒獣が寝ていた。
どおりで寒くないわけだ、不思議には思っていたが、まさか昨日殺されかけた相手にくるまれて寝ていたとは思わなかった。びっくりして固まっていると黒獣がゆっくりと目を開いた。
『起きたか、我の弟子になる決心はついたか子供よ』
「待ってくれ、まずその子供って呼び方辞めてくれ」
『ふむ、ならばなんと呼ぶ ? 』
「サーシャでいいよ」
『わかった、ならば我の事はフレイと呼ぶといい』
取り敢えず遅すぎる挨拶を交わした俺達は朝食を取ることにした。弟子とかその辺の話は飯が終わってからだ。朝食はフレイが取ってきた獲物の肉をフレイが雑に焼いたヤツだった。当然フレイは生肉をゴリゴリと食べていた。
『腹も満たされた、話の続きをしようか』
「フレイ、先に言っておくがどうあっても俺はお前の弟子になれない」
『それは、ラトの事があるからか ?』
「ああ、それもあるがお前は人を何人も殺している。そんな奴の教えを受けようとは思えない」
『なるほど、つまり我が人を殺していなければ良いのだな。というか、そもそも我は人など殺さんし、食いもせんぞ』
「は ?」
昨日、あれだけ殺した数など覚えてないとか言っていたのに何を今さらと思う俺に黒獣が続ける。
『昨日のあれはなんと言うかああ言った方がサーシャが本気を出すと思ったのだ。気を悪くさせてすまん』
「じ、じゃあラトの事知らないって言ったのは…」
『あれも嘘だ、知っている。ラトは今も元気だぞ』
「は ? 」
ラトが生きている?
あり得ない、ラトは確かに死んだはずだ。討伐隊の全滅報告を受けた後に捜索隊が結成され細心の注意を払いながら探索を続け、討伐隊の全滅が真実であると発表したのだ。その時の捜索隊がラトの遺品として持って帰ってきてくれたのが、血塗れになったラトのお気に入りの服だった。あの時見た血の量は明らかに致死量だった。
『気になるのならば見てくるといい、その道を進んだ突き当たりに居るぞ』
「ああ…わかった」
なんと返していいか分からず、言われた通りに道を進む。本当にラトなのかと疑問が浮かぶが、実際生きていてくれるのなら本当に嬉しい。ふらふらとした足取りを一度止め、頬を叩き、しっかりと覚悟をしてから再び歩き始める。
黒獣が遠くになり始めた頃に突然視界が開け、見えた。巨木に腰掛けて本を読む女性が居た。間違いない、記憶の中のラトよりも成長しているが顔立ちや雰囲気がラトそのものだ。
何と声をかけるか迷っていると、いつの間にか本を閉じてこちらを見ていた。
「どちら様 ?」
俺が誰かと言う疑問と、少しの警戒が滲む声で聞かれ俺は気付いた。
今、俺女じゃん。