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side.黒獣

 我は驚愕した。


 目の前の子供が土壇場で見せた力、今の人族は変化魔法と一括りにして呼んでいるが、かつて獣法と呼ばれ、獣人が振るった力の一端。それも、極度に歪んだ力だ。


 獣人と人族の間で起こった戦争の終局間近に開発された禁忌の業、適応出来なければ死ぬか最悪、変化した姿から戻れず理性も失い獣となる技。


 継承は勿論、文献にすら残すことを禁じられたはずの力。だが、目の前の子供は何も知らずに使っている。何とも不思議な話だ、我の故郷の力が人族に渡っているなんて。


 面白い、これまで生きてきた中でもここまで心踊る事もなかった。面白くて興奮して煽ってしまったが、この子供の言っていた"ラト"と言う名の人物に心当たりがある。煽った詫び代わりに傷が癒えたら話してやるか。


 それにしても、ラトを我が殺した事になっているのか。きっとまた、人族お得意の嘘と権力で黙らせたのだ。全く反吐が出る、これだから人族は嫌いなのだ。


 だが、どの種族も子供に罪はない。種族の罪は大人やそれ相応の立場の物が背負えば良いのだ。どんな種族でも子供はのびのびと暮らすのが一番だ。


 そう考えると、我は目の前の子供に中々酷い事をした気がする。強めの回復魔法を何回か掛けておこう。


 我が考え事を続けて居ると、スースーと寝息が聴こえてきた。


 寝てしまったか。少し前まで我と二度戦い、深い傷を負ったのだ、無理もないな。


 寝てしまった子供に近づきペロリと血を舐める。くすぐったそうに身じろぎしているが起きない。起きたら起きたで説明が面倒だったが、寝たままなら好都合だ。


 今の内に祝福を授けてしまおう。


『我が名は、フレイキード。この者に祝福を授ける』


 子供の体が薄く光り直ぐに収まる。


 祝福、ある程度の力ある者が、認めた者に授ける事が出来る物だ。授けられた者は授けた者の力を少し使えるようになる。我の祝福なら回復と斬撃の魔法が使えるようになる。


 祝福と我がこれから始める特訓があればこの子供は、争いに巻き込まれても助かるだろう。


 我の子供達と同じ末路は辿らせたくないからな。



 黒獣はゆっくりと目を閉じる、そのまま近くの岩山に登り、かつての仲間や家族に想いを馳せ一声鳴いた。そのまま子供を尻尾でくるみ傍で寝息をたて始めた。


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