41話
「リ、リーア!?」
突然目を開けたリーアに、ルドルは驚いた。
リーアは目を開けたまままっすぐルドルを見つめた。そして、口をぱくぱくと動かした。
「? どうしたリーア? 話せないのか?」
そんなリーアの様子に困惑するルドル。こちらに何かを伝えようとしているようだが、どうもいつもと違う雰囲気のリーアに、ルドルは戸惑った。
悩むルドルの前で、リーアはしかめっ面になると、目を閉じた。
直後に、再びリーアの頭の形をしたウンディーネがリーアの首元からひょこっと生えてきた。そしてまたウンディーネはリーアの中に消え、再度リーアが目を開けた。
「もしかして……。今リーアを動かしてるのはウンディーネなのか!?」
リーアもといウンディーネは、こくこくと何度も頷いた。ルドルに伝わったのがよほど嬉しいのか、力強く何度も頭を振って頷くウンディーネ。
「わ、わかったからそんなに強く何度も頷くのはやめてあげて」
ルドルは慌ててウンディーネにそう言い、ウンディーネも頷くのを止めた。
「(御伽話なんかだと人に憑依した精霊が語り出すなんて場面はあるけど……。まさか本当に精霊が憑依して人を動かすなんて)」
驚くルドルだったが、ともかく、これでウンディーネとのコミュニケーションは図りやすくなった。
「ウンディーネ、リーアを助けてくれてありがとうな」
お礼を言うルドルに、ウンディーネは満面の笑みになって立ち上がり、急に踊り出した。
「なんだそれ。喜びの舞かい?」
笑いながら問いかけるルドルだったが、ふとその踊りに既視感を覚える。ルドルはかつてこの踊りを見たことがあった。これは、幼い頃に川でリーアに魔法を教えてもらったときに、彼女が楽しそうに踊っていた踊りだ。
ウンディーネは踊りを止めると、自身に指を向けた後、ルドルに指を向け、その場で歩く仕草をした。
「何かを伝えようとしてる?」
ウンディーネは頷き、もう一度同じ動作をした。
「私、俺、歩く?」
ウンディーネは少し不満気に首を傾げた。そして、もう一度自身を指差し、ルドルを指差し、今度はルドルの背後に移動して、そこで歩く仕草をした。
「あ! ウンディーネがリーアを動かして、俺について行けるってこと?」
ウンディーネは再び何度も強く頷いた。そんなウンディーネを制し、頷くときは1回だけだ、と注意しながら、ルドルは考えた。
「(恐らく俺の魔法で呪いの進行をかなり遅らせることができたから、リーアを動かしても大丈夫なようになったんだろう……)」
ルドルはウンディーネに、一緒にリーアを助けような、と声を掛け、右手の親指を上げてグッと前に突き出す。
対するウンディーネも、深く1回頷いた後に、ルドルを真似するように、右手の親指を上げ、グッと前に突き出した。
ルドルには、ウンディーネの表情は、とても誇らしげに見えた。