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31話

 リーアが召喚したウンディーネは、しばらくリーアと手を繋いで跳ね回っていたが、ふいにルドルの方に目線をやると、1人ルドルの方に近づいてきた。


 「!? な、なに?」


 ウンディーネはルドルの手を取ると、驚くルドルの手を引いてリーアの所へ戻った。そしてウンディーネはルドルの手を握る手と反対の手で今度はリーアの手を取り、そのまま2人の手をつながせた。


 「?」


 ウンディーネの意図が分からず困惑するルドルに、オルドが声をかける。


 「召喚されたものは、いきなり召喚主の言うことをなんでも聞くわけではない。しかし、その基本的な行動は読み取った召喚主の感情に基づいておる。じゃから、2人の手を繋がせたのは、リーアちゃんの感情を読み取った結果の行動といえるじゃろうな」

 「そうなんだ……」


 オルドの説明に納得するルドルに対し、リーアは顔を真っ赤にして俯いた。


 ニッコリ笑うルドルからの視線に恥ずかしそうにしながらも、リーアはぎゅっと繋いだルドルの手を放さずにいた。そしてルドルもまた、その手を放そうとはしなかった。そんな2人の様子を、父もオルドも笑顔で見守っていた。


 それから数日後、オルドは今後の稽古の内容を父に伝え、市場に帰っていった。


 オルドが去った後も、3人の稽古の日々は続いた。ルドルは自前の短剣を使い基礎の特訓と父親と実戦形式を行っていった。リーアは魔力を上げる特訓と召喚したウンディーネとの水魔法をぶつける特訓をしていた。


 2人がある程度力をつけてからは、父と3人で、村の困りごとを手伝ったり、獣狩りに行ったりもするようになっていった。


 そんな日々が繰り返され、やがて数年が経った。




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 今しがた獣を狩り終えたばかりの青年は、ふうと息を吐いた。


 「よし。あとはさっさとこの依頼の報告を済ませて、オルド爺さんに話をしに行かないとな」


 そう言って腰に下げた鞘に剣を仕舞う青年は、すっかり成長したルドルだった。手にしているその得物は、かつて稽古で使っていた木の短剣の倍以上はある立派な剣で、勿論木製ではなく切れ味鋭い一品だ。


 「そうだね。私達の話を聞いたら、オルドさん、どんな反応するかな? 私のことを止める? 素直に応援してくれる人だとは思うんだけどな~」


 ルドルに応じるその女性は、成長したリーアだ。かつての幼さと僅かな自信のなさは消え、元気いっぱいの女性に成長している。


 この日2人は獣の討伐依頼をこなしながら、市場へと向かっているところだった。


 「それにしてもリーアの魔法はほんと綺麗で無駄がないよな~」

 「そんなこと言っても何もでないよ!」


 相変わらず仲の良い2人が、そうやって楽しく会話していると、程なくして市場に到着した。2人はそのまま慣れた様子で組合に向かう。


 「オルド爺さん!」

 「おぉ! ルドルにリーア! もう討伐依頼は済ませてきたのかい? ワシの寿命が尽きる前に間に合うとは、腕が良いのう」

 「もういつホントにそうなってもおかしくない歳なんですから、縁起でもない冗談はやめてください」


 辛辣なリーアの言葉に、シュンとするオルド。


 「リーア、お年寄りには優しくしてあげないと..….。あ、忘れないうちにこれを渡しておくな」

 「ご苦労さん。いつにも増して素早く討伐してくれて助かったわい」


 ルドルが手渡した袋を受け取るオルド。その中には、倒した獣から剝ぎ取った討伐の証が入っていた。


 「それと、今日はリーアから爺さんに少し話したいことがあるんだけど、この後時間あるか?」

 「構わんが今は少し立て込んでおってな。しばらく経ってからまた来ておくれ」

 「わかった! じゃあ軽くご飯でも食べてくるよ!」

 「では、また後で」


 そう言ってこちらに手を振るルドルと会釈するリーアに、オルドはニッコリとほほ笑んだ。

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