29話
翌日以降からは、広場でルドルと父は剣の稽古、リーアとオルドは魔法の稽古をする日々が始まった。
そんなある日、木剣の打撃の重さと速度が上がったルドルは、実戦形式での稽古で初めて父を動かすことに成功した。
「やっと父さんを動かすことができたー!」
「よくやったな! すごい成長速度だ!」
疲労困憊でその場に大の字で倒れながら喜ぶルドルを、父は嬉しそうに褒める。
その直後、どーーーんっという爆発音が、リーアとオルドの居る方から聞こえてきた。
「こら! やめなさいと言っとるじゃろ!!」
「えっへへへ」
続いて、オルドの怒声と、リーアの誤魔化すような笑い声が広場に響いた。
リーアもルドルと同様に成長が早かった。オルドから教わったことはすぐにできるようになり、オルドが目を離した隙に勝手に様々なことを試しては失敗していた。そんな日々が毎日続き、リーアはすっかりオルドの手を焼かせる生徒となっていた。
「だって〜! オルドおじいちゃんに教わったことはもうできるよ! ほら! 両手で同時に剣を作れるようになったよ!!」
すっかりオルドと打ち解けたリーアは、言い訳がましくそう言って、両方の手のそれぞれに水の剣を作り出し、ブンブンと上下に振る。
「こんなこともできるよ!」
そしてリーアは両手に持っていた剣を自らの頭上に掲げる。すると2つの剣は、1つの大きな大剣となった。リーアは、それを高く掲げた両手で握りしめたまま、ルドルに自慢気に叫んだ。
「ルドルー! 見て! すごいでしょー!!」
だがその直後、形を保てなくなった大剣はグニャリと崩れ、バシャーンという音と共に水の塊に戻って、リーアの頭上から降り注ぐ。それをまともに受けたリーアは、全身ずぶ濡れになった。
「順を追って教えていくから勝手なことはやめんかい!」
「……はーい」
ずぶ濡れのまま、ぷくーっと頬を膨らませたリーアは、不満そうにオルドに返事をした。
父とルドルはそんな光景を見て笑っていたが、オルドは呆れたように短くため息をついた。そして、少し基礎練習をしていなさいと言い残し、父を呼んで何やら相談し始めた。
残されたルドルとリーアは、リーアは生んだ水の剣を使って、剣の型の自主練習に取り組んだ。楽しそうな2人に反して、オルドと父は何かを真剣に話し込んでいる。
しばらくして、父はルドルとリーアに集まるよう声を掛けた。
「これからリーアちゃんには召喚魔法を試してもらうこととする」
「!?」
オルドの突然の提案に驚くリーア。
「世話の焼けるリーアちゃんはワシの手に余るからの。ウンディーネを召喚して、見張らせようと思ってな」
「何を言ってるんですか」
オルドの冗談に、父はやれやれという表情で応じた。
「見張られるのは困っちゃうけど……。本当に良いんですか!」
「リーアちゃんは以前ウンディーネの召喚に成功している。最近のリーアちゃんの上達があまりにも早いから、そろそろ次の段階として召喚を試させてみようっていうオルド爺さんからの提案だ」
「やったー!」
オルドから自身の成長を認められた気分になったリーアは、飛び上がって喜んだ。