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27話

 興奮しきりのルドルとリーアに、オルドは言う。

 「魔法はな、戦うための道具でしかないわけではない。こうやって人の心を動かすこともできる。すごいじゃろ?」

 「「うん!!」」

 「今はまだ上手く魔法を操れないとしても、落ち込む必要はないぞ。そのために儂が呼ばれたんじゃからな」

 「「はい!」」


 目をキラキラさせてこれから始まる魔法の稽古に胸をときめかせるルドルとリーア。そんな2人にオルドは尋ねた。


 「さて、ではこれから講義を始めるわけじゃが……。まず魔法を使う上で大切なことを教えておこう。お2人さん、魔法を使う上で気をつけるべきことは何かわかるかい?」

 「「うーん……?」」


 首を捻るルドルとリーア。


 「周りに気をつける!」


 最初にそう答えたのはルドルだった。


 「確かに、それも大切じゃな。リーアちゃんはどうかね?」

 「魔法を楽しむこと!」


 オルドはリーアの屈託のない答えに僅かに驚き、そして微笑んだ。


 「それも大切なことじゃな。2人とも良い答えじゃが……魔法を使う上で絶対に気をつけてもらいたいのは、魔力切れを起こさないようにすることじゃ。魔力の消費量が自分の限界を超えると、それを扱う身体の方が壊れてしまう可能性がある。じゃから、己の限界を知り、決して無理をしないことが肝要なんじゃ」


 魔力切れ、という言葉を聞いて、リーアは僅かに顔を強張らせた。


 「リーアちゃんは思い当たる節があるのではないかな? 例えば魔力をたくさん使って、動けないぐらい疲れてしまったこととかの?」

 「! な、なんで知ってるの!?」


 襲撃事件について父から報告を受けていたオルドは、リーアが魔力切れ寸前まで魔力を使ったことを事前に知っていたが、あえてそのことには触れずに続けた。


 「ほっほっほ。随分魔法に熱心なようだからもしかしたら、と思っての。しかし、ワシの言ったように魔力切れは時に重大な結果に繋がり得る。故に、今後は決して無理は禁物じゃ。それを守れるのならば、ワシは喜んで君達に魔法を教えよう」


 守れるかな?そう問うオルドに、ルドルとリーアは真っすぐな視線を向けながら、答えた。


 「「はい!」」

 「良い返事じゃ」


 オルドはニッコリと微笑んだ。


 「さて、ならば早速講義を進めよう。まず最初に、2人の今の魔法の習熟度を確認したい。ルドル君から、実際に何か魔法を見せてもらっていいかの?」

 「実は……。発動させたことはあるんだけど、使いたいと思っても、思ったように魔法が使えないんだ」

 「ほう」

 「でも前にすっごい光で悪者の動きを止めてたんだよ! そのおかげで私、何度も助けられたんだ!」


 バツの悪そうなルドルをフォローするように、リーアがそう言った。そんな様子を微笑ましそうに眺めながら、オルドは言う。


 「そうじゃな。ルドル君の魔法はリーアちゃんを救った。ルドル君が使う魔法はとてもすごい魔法じゃ。具体的な発動条件が分からないのは、これからゆっくり調べればよいこと。条件さえ分かれば使えるようになるから、そう気落ちすることはないぞ」


 リーアとオルドに励まされたルドルは、ニッコリと笑って頷いた。


 「それでは、次はリーアちゃんの魔法を見せてもらおうかね」


 オルドの言葉に、待っていましたと言わんばかりに、勢いよく立ちあがるリーア。久しぶりに堂々と魔法を使える機会がやって来た彼女は、まさに水を得た魚のようだ。


 リーアはスッと両腕を真上に挙げると、その場でくるくると回った。直後、彼女を見つめるルドルに小さくウインクしてみせると、彼女の両手一杯に水の塊が現れる。


 やがて水は1本の太く長い紐のようになると、それを指揮するように振られたリーアの手に合わせて、彼女の身体の周りで伸び、綺麗に回転し始める。


 「ほう。これはこれは……」


 素早く、繊細に魔法を使いこなすリーアに、オルドは感心して唸った。


 やがてリーアは回転するのを止めて、ルドルとオルドの方に向き直る。そして、自身の周りで伸びていた水を一塊に戻すと、身体の前で組んだ手のひらの上にそれを集めた。


 塊に戻った水は、彼女の両手の上で、様々な形へと変化する。丸、三角、四角……。形を変えていく水は、しかしただの1滴も彼女の手のひらに零れ落ちることはない。


 「すごい!」


 ルドルは、リーアが扱う水の塊が形を変えていく度に、感嘆の声を漏らす。


 そんなルドルの反応が嬉しかったのか、リーアは意を決したように、目の前の水の塊に両手をかざし、集中する。直後、水の塊はゆっくりと形を変化させていった。


 その形は、先ほどまでのような簡単な図形ではなかった。持ち手の先に、スラリと伸びる刃。それが短剣の形を模そうとしているのだとルドルとオルドが気がついた瞬間、水は突然グニャリと歪むと、いびつな三角形になって、地面へバシャリと落ちた。


 「……失敗しちゃった。複雑な形は難しいよ~」

 「いやはや驚いた。その年でここまでのことができるのは感嘆に値するわい。あの若造が魔法の才があるから指導してやってくれと必死に言ってくるだけのことはあるのう」

 「うん!やっぱりリーアはすごいや!」


 地面に広がって染み込んでいく水の塊を残念そうに見つめていたリーアは、オルドとルドルの言葉に、エヘヘと照れ笑いをした。


 そして、2人の反応に気をよくしたリーアの魔法ショーがこの後しばらく続いたのだった。

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