26話
「ではまずは、2人が魔法について知っていることを聞こうかの」
「はい! はいはい!!」
オルドの言葉に、リーアは率先して手を上げる。オルドは微笑みながら、リーアに発言を促した。
「人それぞれの個性があるように、魔法にも個性があって、できることとできないことがある! あとは魔力がいっぱいあればいっぱい魔法が使える!」
「そのとおりじゃな。元気いっぱいでよろしい」
褒められ照れ笑いするリーアの前で、オルドは続けて言う。
「ではもう少し詳しく魔法について教えようかの。魔法には今お嬢ちゃんが言った通り一人一人個性がある。水を使うのが得意だったり、火を扱うのが得意だったりといったところじゃな。ちなみにあの若造は炎を少し扱える」
そう言ってオルドは、広場の片隅で黙々とトレーニングに励む父の方を指し示した。
「個性といっても、あくまでそれは得手不得手というだけであって、生まれつき使える魔法が決まっているというわけではない。全ての魔法を使いこなすとなるとまた話は別じゃが、訓練すればある程度は様々な魔法が使えるんじゃ」
オルドの説明を、ルドルとリーアは熱心に聞いている。そんな2人を見ながら、オルドは両手を前に出し、器のようにしながら言う。
「ちなみに儂は色んな魔法が使えるぞ。例えば、ほれ、このように」
瞬間、オルドの両手一杯に水が生まれた。その水は瞬く間に鳥の形に変わると、羽ばたき、ルドルとリーアの周りをくるくると飛び回った。
「わー!!」
「水の小鳥だー!」
自分のすぐ傍を動き回る水の鳥に興奮するルドル。リーアも、自分の扱う水魔法より素早く、質も高いオルドの水魔法に、すっかり高揚している。
ひとしきり2人の周りを飛び回った水の鳥は、やがてオルドの両手に戻ってきた。2人の反応に気を良くしたのか、オルドは更なる魔法を見せる。
「それでは、この鳥に炎の角でもつけようかね」
直後、水の鳥の頭に1本の角が生えた。真っ赤なその角は、燃え盛る炎魔法で形作られたものだ。
「かっこいい!!」
目をキラキラさせるルドルに、オルドはニッコリと微笑む。
「次は電気の羽じゃ」
すると水の鳥の羽が、眩い光に包まれる。直後、ビリビリと帯電した様子の羽には、雷魔法が込められていた。
「うおおおおお!!!」
興奮したルドルは、立ち上がり、目を見開いて3種の魔法で構成された鳥を食い入るように見つめた。
「ほっほっほ。魔法はすごいじゃろ? 訓練すればこういうこともできるというわけじゃ」
そう言ってオルドは、手の中の鳥を軽く促した。すると、鳥は力強く羽ばたき、3人の真上に飛び上がる。
みるみるうちに高度を上げる鳥を3人が見つめる中、オルドがサッと軽く手を振った次の瞬間、空高く飛び上がった鳥は上空でパンッ!と爆ぜる。空中でキラキラと輝くその残滓は、まるで打ち上げ花火のようだ。
「すごい!!」
「綺麗!!」
無邪気に喜ぶルドルとリーアの姿を見て、オルドも嬉しそうにニッコリと微笑んだ。