22話
魔法の使用を禁じられたリーアは、酷くショックを受けていた。魔法が大好きなリーアにとって、それは一大事だったからだ。
しかし、先日の襲撃の時に無力だった自分を変えたいと思っていたリーアは、絶望しているばかりではいけないと、気持ちを奮い立たせて父の方を向いた。その真剣な表情に、父もルドルも思わず黙り込んだ。
「な、な、なんで、だ、ダメなんですか!?」
真剣な表情とは裏腹に、焦りを隠しきれていないリーアに、父もルドルも思わず吹き出す。
「笑い事じゃないです!! 私にとっては一大事なんです!!!」
リーアは恥ずかしさに顔を真っ赤にしながら、必死に訴える。
「いやすまない、リーアちゃんの気持ちはよく分かる」
父は可笑しさに滲んだ涙を拭きながら、真面目な表情に戻り、こう続けた。
「何も俺だって意地悪で言っているわけじゃない。リーアちゃんの魔力は、その質も量も、子どもが扱うにはあまりにも強すぎて危険なんだ」
「え……」
「もちろん、リーアちゃん自身が危険な存在だと言っているわけじゃない」
父の言葉に不安げな表情を浮かべたリーアの頭をわしゃわしゃと撫でながら父は言った。
「リーアの魔力はこの村イチと言っても過言じゃない。村の外まで含めても、俺の知ってる魔法が得意な連中より魔力だけなら断然上だ! 独学でそこまで魔法を扱えるのは本当にすごいことだよ。ただ、間違ったやり方をして身体を壊すとまずいだろう? だから魔法に詳しいやつを呼んでいるからそれまでは我慢してくれ」
父の顔をジッと見つめながら、リーアは大人しく話を聞いている。
「俺が教えてやれればいいんだが、魔法にはあまり詳しくなくてな。リーアちゃんのレベルだと、俺が教えられるようなことはほとんどない。その代わりと言ってはなんだが、リーアちゃんの身体が強い魔力に耐えられるよう、まずは俺が身体作りから指導しているというわけだ」
「……分かった」
理由があって魔法を禁じられたのだと理解したリーアは、そう言って小さく頷いた。けれど、その表情は、まだ少し残念そうだった。
そんなリーアを見て、ルドルは声を掛ける。
「僕1人で剣の稽古をするのは辛いから……。一緒に頑張ろう?」
「! うん!!」
ルドルの言葉に、パっと表情が明るくなるリーア。そんな2人を見て、父は満足気に頷いた。
「よし、じゃあ広場まで行って、稽古開始だ!」
「「はい!」」
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それから数時間後、稽古の初日を終えた3人は村の広場に居た。
父の稽古の内容は、基礎体力をつけるためにランニングと筋トレを行い、木剣を使って剣の型を覚えるというものだった。今日は初日ということもあって、父は軽めの内容にしたつもりだったが、ルドルとリーアにとってはそうは思えなかったようだった。
「くたくただ〜」
「もう歩けないよ〜」
そう言って地面に倒れ伏して動かないルドルとリーア。
「まだ終わってないぞ! 家に帰るまでが稽古だ!」
そう言って2人を大きな腕で軽々と立たせた父は、そのまま2人の背中を叩いて鼓舞する。
「さぁ、家までダッシュだ!」
「「ええ~っ……」」
結局そのまま3人はまずリーアの家までランニングを行った。その後、ルドルと父は今度は2人の家まで走って帰宅した。
「ただいま……」
げっそりとした顔で帰宅したルドルは疲れ切っており、簡単に夕食を済ませた後、すぐに自室に戻って眠ったのだった。