青い3DSと青い3DS
・・・・・・お前が、こんな問題にガキを巻き込むからだ、と私は妻を意識した・・・・・・私ではない私は骨の髄から激昂したのだった。
「まだ臭ってねぇだろうが!!」
唾を飛ばして吠え、膝の裏で押しやった椅子の足がフローリングの床を引っ掻く勢いで立ち上がり、広いテーブルを覆うように身体と腕を伸ばすと、すっかり覚えてしまった8小節のデスを止めない息子のゲーム機を暴力的に奪った。
真正面にいる父親しか映らなくなった目を見開き、ついこの前までフケの多さを自慢しては母親を困らせ、私を驚かせていた豊かな髪の毛が、全く供養針のように逆立つ。息子の時間は自転もろとも止っていたことだろう。
「さっきからよぉっ!!、ピコデスピコデスピっコデスっ、ピコピコ、デスデスっ!! こんなクソみてぇなもん好き放題買ってやったからだろうけどなっ!!」私は青い3DSを真っ二つにへし折った。
固まる幼い瞳から息を吸い込み、果敢に時間を動かし始めた息子は、あっという間に涙袋をパンパンにして無言のまま睨んだ。そして目を逸らさず立ち上がると身体を震わせ大きな足音でゆっくりキッチンを横切り階段を上った・・・・・・涙袋も身体の震えも足音も全てが倍になって下へ戻ってくると、手にはやはり同じ色の3DSが握られていた。
「???」私は我が家に二台あることを知らなかった。どうやら、破壊したのは妻方の祖母から買ってもらったばかりの3DSだったみたいだ。
「そっちじゃない。こっちが犬の尻の穴に買ってもらった方だ・・・・・・」奥に乳歯の残る歯を擦り合わせながら、咽喉仏の反響で告げると、私を地獄の如く睨み付け、私の目の奥で開いた感情の扉の向こう側へ、自らの怒りの松明を放り投げる目つきのまま、彼の腕はそれを真っ二つにへし折った。
息子は再びゆっくりと階段を上がり叩きつけるように自分の部屋のドアを閉めた。家が少し揺れたほどだった。
私の理不尽な激昂に、やはり驚いた妻だったが、瞬く間に腸の全ての炎は、大滝丸ごと氷柱祭りマイナス15℃の諦念に鎮火した。夫に対して100のことを120納得する感じで首を振り、心も口先も無言のまま流しの明かりを落として階段を上がっていった。
三軒隣まで聞こえそうな号泣をしている息子の部屋の前でノックしながら声をかけている妻の声が聞こえた・・・・・・。