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その後 王配の条件②

 国王が近い期間に連続して亡くなる悲劇から3年余りが過ぎた。

第一王子は元気に成長しているし王国の将来に悲観的な民衆は最早居ない。

その功績は何より女王陛下のおかげだ、と臣下や国民の大多数は思っている。


 この王国の最上位に立つ存在、女王エヴァリーナはようやく22歳。

年齢に見合わぬ聡明さと人々を虜にして止まぬ美貌を持ち合わせたこの女王は国民の人気が非常に高い。

王国を率いる手腕や諸外国との外交も今の所、特に文句のつけようもなく無事にこなしている。

国の顔が才色兼備な若き美女なのだからエヴァリーナは臣下や国民にとってまさしく誇りといえる存在になっていた。

 

 そんな臣下や国民が願うのはエヴァリーナを中心とした王家が安泰に存続する事である。

有能なエヴァリーナ女王にとって最近頭を悩ませている問題は国内問題でも外交問題でもなく自身の事だ。

臣下や国民から上がって来る声で最も多いのは第二子をもうけて欲しいという旨の要望であった。


 後継者が王子一人では心もとないという声はやはり多い。

実際、『王子の父は不慮の死を遂げたではないか』という訳だ。

万が一の事を考慮して第二王子をもうける事はエヴァリーナに課せられた喫緊の課題とされている。

かといってエヴァリーナはいわゆる寡婦であるから無論今のままでは無理だ。

つまり臣下一同の願いはまだ若いエヴァリーナに新たな夫を迎えてほしいという事であった。


 この統治の間にエヴァリーナは王室規範に新たに重要な一文を付け加えていた。

側室制度の廃止である。

もちろんエヴァリーナは女性であるからこの制度に関係する事は無い。

しかし、その一文を付け加えた本人であるから正式な伴侶以外の異性は認めないという意味もまた分かりきった事である。

と、なると正式に夫を得てもらうしかない。

エヴァリーナは現在女王として王座に就いている訳だから要するに王配の事である。


 アウグスト前国王を失ったエヴァリーナに男の影は全く見えない。

国民の目に常に晒されているのに浮いた噂一つ出てこないのだから間違いは無い。

仕事一筋で極めて有能な女王である故かそれらしい存在を噂される事も全く無い。

唯一常時身近にいる異性は副宰相ケストナー侯爵くらいだが彼は女王の父親である。

つまり王配になる可能性のある男性は今の時点でエヴァリーナの周囲にまるで存在しない状態であった。


 そういう訳で連日臣下達から王配になりうるにふさわしい貴族の令息や諸外国の王族についてさりげなく執拗にエヴァリーナへ話が持ち込まれた。


 さすがに自分だけで解決するうまい策も見つからず、エヴァリーナはいつもの情事の後で義父にその事を相談した。

お互い何となく避けていた話題だった。



「誰よりも私が二人目を求めているのに……儘ならないものですわ」


「……しょうがないな。私達の関係は公に出来るものではないのだから」



 もちろん二人は充分に気を配って毎回避妊をしていた。

万が一にでもエヴァリーナが妊娠したら言い訳しようもない命とりの事態になる。

しかし周囲のプレッシャーを無視して何時までもこのままでいるのも不味い。

考え込むオリヴェルに不安になってエヴァリーナは口を開く。



「まさか……お義父様は私に王配を迎えろと云うのですか?」


「そういう必要もあるかもしれん」


「嫌です! お義父様以外の方なんてっ!」



 エヴァリーナはオリヴェルにしがみついて泣いて訴えた。

執務室の扉は分厚いものではあるが外に聞こえないとも限らない。

感情的になって大きい声を出す事はエヴァリーナには珍しい事だった。

オリヴェルとしても勿論そんな事はしたくない。

だとすると別の候補者を立てる必要があった。


 しかし、口に出すまでもなくそれは容易な事では無かった。


1・エヴァリーナと性交しない。

2・だが、オリヴェルとの間にもうけた子供を実子として認知する。

3・その事を死ぬまで黙し続ける事が出来る。

4・王配に相応しい身分と人格・能力を持つ男性。


……そんな条件を満たす様な都合のいい存在が果たして存在するのだろうか。


 とにかく探す以前に課せられたハードルが高すぎる。

何かいい手立ては無いものか。

二人の関係が秘密である以上オリヴェルとエヴァリーナがお互い以外に相談できる者などいないに等しい。



(いや、一人居るか)



 オリヴェルの脳裏に浮かんだのはアウグスト暗殺の際の共犯者である子爵である。

突破口を求めてオリヴェルは子爵の元へ足を運ぶ事にした。

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