【8話】面接
ジリリリ!ジリリリ!ジリリリ!ジリ…
ピッ
いつもはうざいと思うアラームの音も、今日は少し違って聞こえた。
正直言って、勝負事の日というのはあまり好きではない。この妙な緊張感がどうも好きにはなれないのだ。
「あれ?父さん今日休みなんだ?」
今は9時だ。いつもなら8時には家を出ている父が家にいるのはとても珍しい。
「ああ、今日試験だったな。行けそうか?」
「さー、経験がないからね。まあ、いけるとは思う」
「そうか…」
「今日はカツサンドなんだね。試験意識?」
「まあ、そうだな」
俺も父さんも緊張してるせいか。会話が全く続かない。
「まあ、リラックスしていきなさい」
そよ風と共にコーヒーの匂いが鼻に入る。
「これでも飲みなさい」
父がグレンの前にコーヒーを出す。
「あの…俺コーヒー飲めないっす」
「あ、、」
まあ、一口飲んでみるか。うっ…
「えっとー…とりあえず砂糖とミルクとってくれない?」
「苦かったかw」
「少なくともコーヒー牛乳の方がうまい」
「まだまだ子供だな」
「コーヒー飲めない大人もいるでしょ?」
「いや?僕は知らないね」
「とぼけやがってw」
そうこうしているうちに時計の針は9:30を指していた。
「ヤッベ。話しすぎた!歯磨きしねえと!」
「おお。ごめんな。僕も見てなかったよ」
俺は歯磨きを済ませてから、着る服を考える。
なんか動きやすくて見た目もそこそこのやつ…
「父さん!動きやすくて見た目もそこそこのやつない!?」
「お!それならスーツがおすすめだ!」
「うるさい」
「えぇ…」
ジャージ…はダサいか。
「短パンとかどうだ?」
「うーん…ギリなし!」
あ、確かタンスの奥に履きやすいジーンズがあったはず。んで上はこの白無地の半袖で…
「なんか羽織るのない!?」
「お!それならスーツの上着だな!」
「シャラップ!」
「えぇ…あ!スーツっぽい上着ならあるぞ?」
「どれ?あー…良さげ。これ借りてくね」
「分かった」
服を着て鏡の前に立って髪を整える。
うーん…まあ、チャラくはないしいいか。
9:45分、グレンは家を出る。
「身分証持った。財布持った。スマホ持った。やる気持った。オッケー、これで完璧。行ってきます!」
「行ってらっしゃい」
オーバーヒート、耐熱、飛行発動。こないだは服にかけるのは忘れなかったんだけど、スマホにかけ忘れて溶けたからな。持ち物全般にかけるようにしないと。
「ふぅ…行きますか」
シュン!
「ハハ!まじで涼しい!空は自由でいいなぁ!」
もうちょいスピード上げるか。
バン!
グレンはソニックブームを起こし会場に向かう。
「よっと…着地も完璧」
あれが受付か。
「あの、冒険者試験を受けにきました」
「身分証の提示をお願いします」
「はい」
グレンはカバンから保険証を出す。
「はい。確認できましたので、1階の待合室でお待ちください。面接開始時には試験官が呼びに参ります」
「分かりました」
部屋がいくつもあったが、扉に待合室と書かれたデカイ紙が貼られていたので、迷わなかった。
部屋に入ると50人くらいの人がいた、部屋は何かのパーティー会場くらいの広さで、置かれていた机にはお菓子や水が置かれている。
とりあえずそこら辺の席に座ることにする。席がパーティー配置なこともあって、前を向くと目が合ったりすることがあるだろうから、俺はずっとスマホで試験情報を調べていた。が、俺はあることに気づいた。
ちょっと待て!周り全員スーツじゃねえかあああああああああ!開幕やらかしたぁ。いや待てよ…俺は多分まだ呼ばれない。そのうちに言い訳を考えればいいわkー
「えー…グレン、グレンフォンヒードさんわたしについてきてください」
「はい」
あー…まあ…なんとかなるか…うん。だって、格好自由って書いてたし。ダイジョブ
「こちらです。どうぞお入りください」
コンコンコン
「失礼します!」
どうぞ、そちらへおかけください。
「はい」
部屋は学校の一教室くらいの広さで、受験者と対面するように3人の面接官が座っている。真ん中の人はスキンヘッドで怖そうな人だ。右の人はなんだか疲れてやつれているようだ。左の人はなんだか頭の硬そうなおばさんだった。
スキンヘッドの人がグレンに質問をする。
「えー、それでは面接を開始します。名前を言ってくだい」
「グレン・フォンヒードです」
「学校はどちらですか?」
「シャーロ魔術高等学校です」
「大学は?」
「行ってないですね」
「なぜですか?」
「行く意味が見つからなかったので」
嫌だなぁ。この見下してくる感じ。多分あっちはそんなこと思ってないんだろうけど。しかもなんか言うたびペンでなんか書いてるし…
「えー、では志望動機を聞かせてください」
「外の世界を見てみたいと思いまして…」
俺がそう答えると、おばさんが割り込んでくる。
「貴方、冒険者を舐めてます?」
「舐めてはないですけど?」
「大学も出ずに…しかも!外の世界なんて危険だらけ!完全に舐めているとしか思えません!」
「…冒険者に大学は必要ですか?学力が全てですか?」
「…」
「危険と知った上で外を見てみたいと思いました。覚悟もあります」
まあ、これでおばさんの機嫌は終わったな。まあ、どうにかなるだろう。
「次の質問に行きます。あなたが自慢できることを教えてください」
「固有魔法を持っています。こう見えて頭がいいです」
「短所はありますか?」
「ゲームになると短気になるところです」
おばさんがまた割り込んでくる。
「ゲームごときでぇ?あらぁ?そんなんじゃあパーティーに八つ当たりしないか心配ねぇ!?」
「では、ゲームと冒険者ミッションの関連性を教えていただけますか?」
「は?」
「いや、そこになんか関係性があるのかなと思って」
「同じ対戦、協力要素があるじゃない?」
「ああ、私のやってるゲームは囲碁や将棋などの個人競技なんで関係ないですね」
「でもさっき短気になるって-」
「ああ、自分のプレイが下手な時イライラするんですよ?笑」
プチッ…
こいつぅぅぅぅぅぅ!!!ヘラヘラしやがって!!!!!!
「では!貴方は先程頭がいいと言いましたが、証明できますかぁ?」
…とんだ老害だな
「では、私の頭が悪いことを証明してください」
「できますよね?人に証明しろって言ったくらいですからー」
「そうやって楯突くとこだよ!」
「では、検察官に反論する弁護士は頭が悪いと言うことですね?」
キィィィィィィィィ!!!!!
「ミーバさん。監督控室へ戻ってください。あなたは今、冷静ではない」
「だm…分かりました…」
後の2人はまともか。
「では、最後に一つだけ質問します。あなたの座右の銘を教えてください」
「…どうにかなる。なんとかなる。です」
「これで面接を終了します。2階の受験室に移動してください」
「ありがとうございました」
グレンは、お辞儀をして部屋を出る。
…まあ、面接はいいや!筆記と実技で巻き返そ!ていうか…やつれてる人最後まで一言も話さなかったな。