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【6話】食卓

「な、なんだこの肉!美味え!」


 全員のご飯を食べる手が止まらない。


 なんか、引きこもってたのが馬鹿らしくなるくらいの美味(うま)さだな。久々食った米も美味い!


「俺こんな飯初めて食ったよ!」

「俺もだよぉ!」

「こんな美味いのになんで有名にならないんだ?」

「この店宣伝しないんすよ。おやじさんが人がいっぱいきたらその分働かないといけないから面倒なんだってさ」

「今日は運がいい日だーーーー!」


 焼けた肉を、タレに(ひた)して…それで米を包んで食べる。

 濃い味のおかげで米が進むっ!しかも噛めば噛むほど肉汁が溢れてきて…


「最高だぜええええええええ!まじ美味えよグレン!」


 しかもこの酒!焼肉に合うさっぱりとした味わい!それでいて脇役にならない存在感がある!


「口が幸せだぜぇぇぇ…」


 すると、食事を食べ終わったタイミングでデザートが出てきた。


「え?俺頼みましたっけ?」

「いや、これはサービスだグレン!なんかいいことあったんだろ?」

「あざす!」


 なんだぁ?バニラアイスか?ガツンとくるわけじゃねえけど、それでいてきちんと 甘い と感じれる!スイーツとしての格が落ちてねえ!ここに大将の努力を感じるっ!




「ふぅ〜、食った食った」

「そろそろ会計するか?」

「グレン?悔いはないか?」

「悔いが残るのはマイル達でしょ」

「俺たちはもう満足だぜ」

「じゃあ…帰るか」

「そうだな。じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます!」

「おう!大将!お会計お願いします!」



「んじゃあ、焼肉コース米付きで5000ベルだな」

「安くない?おやじさん?」

「久しぶりに来てくれたし、半額にしといたよ。んじゃあな!また来てくれよ!」

「あざっす!!!絶対また来ます!」


 そしてグレンたちは店を出る。


「グレン、今日はありがとな」

「こっちこそ、色々あったけどなんだかんだ楽しかったよ」

「また会おうな」

「スマホあったら連絡先交換できるんすけどね」

「…冒険者になったら、またどっかで会おうな」

「ありがとう、絶対会えるよ」

「おう。じゃあ、俺たち宿こっちだから。じゃあな」

「うん、おやすみ」





「ただいまー…って、父さん今日も仕事か」


 俺の父さんは、俺が7歳の時に母さんが失踪(しっそう)した時から男手(おとこで)一つで俺を育ててくれた。あの時の父さんの泣き顔と声は今でも忘れない。


 俺が学校に行きたくないと駄々(だだ)をこねたときや、不登校になったときでさえ、父さんは俺を一番に思ってくれた。


 でも…


 母さんがいなくなったあと日から、父さんはいつもどこか寂しそうだ。


 俺はいつも通り冷蔵庫を開く。いつもはコンビニの物をレンジでチンして食べるのだが、なんだかもう家で暮らすのも最後のような気がしていた俺は久しぶりに何かを作ることにした。


「なんだったっけなー…あー、あれだ!あれだって…」


 子供の頃にみんなで食べたやつ…えーと、なんだっけ?鳥料理で…唐揚げじゃないな…あ、思い出した!



「うーん…不味(まず)くはないんだけどなぁ。なんかたりないなぁ。うーんここら辺の味の違いはもはや隠し味の領域だろ」


 まあ、今日はかなり疲れたし、もう寝ることにする。明日の父さんの反応が楽しみだ。柄じゃないが…いや、普通に喜んでほしいな。



 ー22:00、父帰宅ー


 家の戸を開けると、普段と違うことに気づく。

 クンクン

「何か(にお)いがするな」


 荷物を片付けてリビングに向かうと、机の上に料理とメモが置かれていた。


「鳥の照り焼き?」


[父さんへ]

 いつも仕事ありがとう。今日はいろいろあった。多分、冒険者としてやっていけると思う。

 いつも料理運んでくれててありがとう。やったことはないけど、動画でたまに流れたりするから俺も料理できるかなーって思って作ってみました。おいしい以外の感想はいりません。以上!


「よく昔にクレハが作ってくれたっけなぁ」


 照り焼きを口に運ぶ。一口、二口と肉を頬張(ほおば)る父の頬を一筋の涙が伝う。


「う…うぅ…。違うよグレン…うちのはハチミツが入ってたじゃないか……」






「おはよう…あ〜…ねむ」

「おはよう。今日は早いんだな」

「やることができたんだよ。これから試験終わるまでは忙しくなりそー」

「…そうか。あ、そうだ。照り焼き美味かったぞ。ハチミツが入ってればもっと美味かったな」

「カァー!ハチミツか!そんなもん家にないだろ!」

「ないよ」

「やっぱないじゃん。あ、そうそう。昨日いろいろあってスマホ溶けてたり1500万もらったりした。あと、今日の帰りにスマホ買ってくるね」

「分かった。行ってきなさい」

「行ってきます。1500万は金庫入れといたからねー」


 そしてグレンは家を出た。


「それじゃあ俺も…コーヒー飲み終わったら行くとするかな。ヨイショっと」


 缶コーヒーを片手に皿を洗う。


 なんか普段よりめんどくさい作業がめんどくさくない気がする。全く…グレンも(いき)なことをするじゃないか。それにしても…


「1500万ってなにかな。どういう、、なんだ?」


 いや、いくら父といえど驚かないはずがないよ。1500万なんて額。闇金?いやまさかグレンに限ってそんなことするわけないか…

 冗談かもしれない。いったん金庫を見に行こう。


 金庫の中身を見る。


「はええ〜…とりあえず会社行くか」


 なんか他にもすごいこと聞いた気がするんだが、他のがインパクト強すぎて忘れてしまった。

 でも、我が子の成長には驚かされるね。






「ちょっアップしとくか」


 昨日自転車を持って帰り忘れたせいで、歩き以外の選択肢を封じられた俺は開き直っていた。


 別に、時速3000キロくらいいいだろ(耐熱術式発動+オーバーヒート300秒)。どうせ空飛ぶんだし。昨日でだいぶ魔力操作慣れたからいけるだろ。なんかの法律にかかりそうで怖いんだよなー。まあ、飛ぶのは許可されてるしいけるか。


 えっと…まず上に跳んでから…


 ドンッ!


「どこだ?えーと、あそこか!」


 俺は狙いをつけて一気に炎を出して移動する。


 バン!!!!


「やばいやばいやばい!バランス取れない!」


 テキトーに出せばいけると思った俺が馬鹿だった。全く安定しない!


「俺今どこ行ってるんだああああああああ!!」


 グレンは空中で右往左往(うおうさおう)していた。


「あ、見えた!一応進んではいたのか!ゆっくり火を弱めて…」


 グレンは今、色々な場所から炎を出して空中に(とど)まっているのを忘れていた。

 一箇所だけ弱めてしまったため、バランスが崩壊し研究所前の地面に叩きつけられた。


 ドッカアアアアアアアアアアン!!!!!!


「痛ってー…」

「攻撃行為ヲ感知。警告!警告!手ヲ頭ノ後ロニシテ、地膝ヲツケナサイ」


 どこからともなくロボがやってきて、グレンの周りを囲む。


 うっわ、やちまったぁ………


「あ、その人は許可されてますよ!」


 ドワーフの一人がロボに叫ぶ。すると、ロボは警戒を解いてどこかに行った。


「昨日許可証渡すの忘れちゃって…すいませんね。あの、大丈夫ですか?」

「…ギリ大丈夫です」

「あ、案内しますよ」

「ご丁寧にありがとうございます」




 さーて…実験場で飛ぶ練習でもするか。


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