【5話】友達
やっぱし、ちょっと頭がくらくらするなぁ。
扉を開くと、俺の顔を見るや否やマイル達が抱きついてきた。
「グレンンンンンンン!!!!お前すごいやつだったんだな!」
「まさか勝っちまうなんて思わなかったぜ!」
「強いとか嘘ついてごめんな!」
「一応生き残ってたのになんもできず退場しちまったよ!俺なんて」
「俺らにも魔法教えてくれよ!」
おうおうおうおう!なかなか暑苦しいな。まあ、嫌な感じはしない。
「そっちもお疲れでしたね。死んだかと思ってヒヤヒヤしましたよ」
「いや、まじで死ぬほど痛かったけどよ、すぐ気絶したからわかんねぇや!ハハハハハ!!」
「そういえば、なんで気絶したのに俺が勝ったって知ってるんすか?」
「ああ、俺らのやられっぷり観ようと思ってドワーフ達に頼んだら見せてくれたんだよ」
「なるほどです」
グゥゥゥゥゥゥ…
「あ…すいませんね笑笑。結構頑張ったんで腹減っちゃって」
するとマイルが笑顔で俺に言う。
「なぁ〜に、そんくらい奢らせてくれや」
「マジすか!それじゃあ早速…あ、少し待ってください」
「ん?いいけどどうした?」
「ドワーフ側に少し頼みたいことがあって。10分で戻ります。先外で待っててください」
「おう!」
俺があちら側に要求したいことは3つだ。
1.この施設の実験場の貸し出し
2.ロボの貸し出し
3.スマホの買い替え
今気づいた。多分溶けてどっかいってるじゃねぇか。ふざけやがって。◯すぞ☆
そして、グレンは医務室についた。まだ医療道具を片付けているドワーフに話しかける。
「ここの責任者と話をさせてくださいませんか?」
「え、どうしてですか?」
「少し話したくて」
ここで友好を築いておけば、後々わたし達にメリットがあるかもしれない…
「ええ、分かりました。では、わたしについてきてください」
「…なんだね。私に話とは」
ん?なんか威圧的だな…友好的にお願いをするのは厳しいか。
「少し考えましてね…こちら側は命の危機に晒された。ですが、渡されたのは金だけ。額だけ見れば立派ですが、客観的に見てどうでしょうか?」
「一体何が言いたいのかね?」
「命を1500万ポッキリで終わらせたという事実ですよ」
「同意したじゃないか」
やはりこうなるか。相手の頭脳は明らかに俺より上。舌戦は避けたかったのだが。まあ、ある程度は仕方ないか…
「では、書類などはありますか?」
「…」
「正当な手続きであれば同意書、または書類があるはずです。それに、俺は同意しますなんて言葉はおろか、そんなニュアンスの言葉すら口にしていません」
「受け取った。ということはこちらの要求を飲んだと解釈しても良いのではないかね?ん?」
「それはそちらの解釈ですよね?書類もないのに 私はこう思ってました なんて都合がよさすぎませんか?しかもこっちは魔力切れで少し混乱していました。その時に重要な話をするのは状況を利用した立派な詐欺ではありませんか?」
「では、裁判でも起こしたまえ。君が命の危機に晒されたという証拠でもあるならな」
「俺と一緒に戦った奴らと外部からの協力者」
「!、なぜそれを知っている」
「ああ、やはりそうでしたか」
「っ!」
「失礼を承知で言いますが、あんな魔力ドワーフに出せる訳がない。それに、あんなこちらが不利な条件を出しておいてバフをかけるのは考えづらいという点からそう推測しました」
「…一体何を要求する。この施設かね?」
待てよ…よく考えたらスマホは自己責任か。まあ1500万で買えばいいや。
「まさか、俺が要求したいのは2つです。明日と明後日の2日間、実験場と俺が戦ったロボの貸し出しをして欲しいです」
「それだけかね!?」
「はい、それを言うためにきましたがそちらが妙に威圧的だったので」
「…分かった。要求を聞き入れよう」
「では、ありがとうございました」
グレンはお辞儀して部屋を出た。
俺たちは歩きながら雑談をした。
「おう!終わったか?」
「ああ、終わった」
「一体何を頼んできたんだ?」
「明々後日に冒険者の試験がありますよね?」
「おん」
「そのためにあと2日間ここ貸して欲しいなって」
「なるほどな。でも、お前くらい強いなら試験くらい受かりそうだけどな」
「まあ、念には念をってやつっすね」
「あ、そうだ!何奢って欲しい?」
「んじゃあ…おすすめの居酒屋あるんですけど、行きません?」
「おっwww呑むんですか?兄貴?」
「んや、実はまだ未成年なんですよ」
「え?まじか。ならなんで居酒屋?」
「シンプルに飯が美味いんです」
「あ、俺ら道わかんねぇ」
「えと…そこ右っすね。案内するんでいいですよ」
「助かる」
「ていうかグレンって固有持ちか?」
「まあ、なんかバフのおかげでクソ強になってましたけど、能力だけで見るとそんなに強い能力じゃないですよ」
「そ、そうなのか?俺らにはなかなか強く見えたけどな」
「そういえば、冒険者で一番強いのって誰すか?」
「確かな…いや、どこが一番強いかは知らんが、最上位パーティーは7組だな」
「なるほど」
「名前聞くか?」
「いや、関係ないし別にいいや」
「お、そうか」
そうこう言っているうちに、店に着いた。
居酒屋 こだわり亭
木造建築で、古めの建物だ。酒だけでなく料理にもこだわっており、使う食材も店長がこだわりを持って選んでいるらしい。ちなみに、子供の頃よく親と行っていた。
「おお!なんか年季いってて美味そうだな!」
そして俺たちは店に入る。
「おやじさん、久しぶりです」
「ん?ああ!グレンか!久しぶりだなぁ!元気にしてたかぁ?いってぇそういう風の吹き回しで外なんか出てんだ?」
「いやはや、就活を始めまして、、」
「おー、働く気になったか!まあ、とりあえず座りなさい!そちらの方々は?」
「友達です」
「んじゃ、空いてるとこテキトーに座ってくれ」
座るとメニュー表を手に取った。約40ほどのメニュー全て、店長のこだわりだ。
「おやじさん、焼肉できる?」
「おお、いいぞ!」
「俺たちなんもわかんねぇから、グレンのおすすめで頼んでくれや」
「任せてくだせえ」
奢ってもらう立場で、あまり高価なものを頼むのは失礼なので、コスパが良くて美味いものを頼むことにする。
・店長の気まぐれ焼肉 ・店長の気まぐれ焼肉(魚介)
・米(エルフ産)
まあ、量多いしこんくらいでいけるだろ。米はエルフ国の原産でこの国じゃ育ちにくいし、こっちで作ったのとあっちで作ったのじゃ味も食感もまるで違うから高いけど、まあ美味いからいいとしよう。
そして、メニューが届く。
「今日の肉は火竜フリュセドラ、ターミナルホッピンピッグ、フシャフンド、イシキュアンにガルセイアで、魚介の方がジェリーシェル、玄武貝、インジブルシェル、ジェットシュリンプ、宝魚アメージオンだ!あと、米だな。どれも美味いぞ!んで、ウィルロック5つな!こりゃなー…度数7%だな。ゆっくりしてってくれや!」
「んじゃあ!グレンの勝利を祝って…」
「カンパーーーーーーーーーイ!!!!!!」
みんなでワイワイ飯を食うのもなかなかいいもんだな。ま、酒じゃないが勝利の美酒を味わうとしますか。