【4話】決着
ドォン!!ドォン!!ドォン!!…
グレンとロボの拳がぶつかる度に、衝撃波が部屋中に轟く。
「タフな機械だなぁ!」
「丈夫ナ人間ダ!」
もう打属性は効きが悪い。炎魔法も耐熱術式も獲得されてるせいで効きが悪い。困ったな…だが、魔法属性耐性じゃない分、殴りよりはまだ効きがいいか。
「このままじゃ勝負はつかないぞ!」
「…」
何カ…何カ違ウ。リミッターヲ解除シテ、モウ成長ハ無イハズナノニ。何カ足リナイ。マダ…マダ成長デキル気ガスル。
ズゥン!
「っしゃぁ!やっと一発入った。どうした?さっきより動きがトロいぞ!」
グレンは勢いよくぶっ飛んで、壁に叩きつけられる。
「アア…ソウイウコトカ」
ヴゥン、ヴゥン、ヴゥン、ヴゥン…
部屋中のいたるところに魔法陣が現れる。
「おいおい…まじかよ…」
「コレガ俺ノ答エダ!!」
一つ一つの魔法陣が全て別の魔法を放つ。
「全属性豪雨!!!」
「っ!!!!!!流石に避けられない!」
グレンの体にさまざまな魔法が衝突する。
「痛ってえ!!クソっ避けようがない!!」
「コレデ終ワリダ」
ロボはチャージを開始する。しかし、今度はレーザーではなくさまざまな属性を圧縮して作った一本の槍だ。
「マダダ…モット、モット…」
「まずい!今回はまじでまずい!抜けれないっ!早く…しないとっ!!!」
バチッ、バチッ!…
あまりの魔力に槍の周りの空間が歪む。
「コノ勝負モコレデ幕引キダ!全属性超圧縮槍!!!」
放たれた槍はグレン目掛けまっすぐ飛んでくる。
グサ…
「あっ…がぁ…ガハッ!あ…ぁ」
俺は真っ直ぐ地面に落ちる。
ああ…全く見えなかった。打たれた瞬間しか見えなかった。速すぎだろ。完敗だ。でも…俺にしては頑張った方だろ。
はは…ああ、死ぬ。視界がぼやけてきた。案外あっけないんだな…刺さっただけじゃないのか?
グレンは腹を触る。
はは…ていうか…胸から下、どこ行った?
〜研究所内監視室〜
「…停止機能は、どうしたんですか?」
「ずっと押してたよ!何故だ!何故反応しなかった!?」
「あいつ!制御機能を壊したんだ!」
「じ、じゃあこのまま試験室の壁が破られたら?」
「…君たち?」
「なんだ!こんな忙しい時に!」
部屋にいたドワーフ達の首筋に、透明なナイフが出現する。
「私は、君たちを許さない」
「やっ、やめろ!たった一人の人間じゃないか!何をそんなむきになる!?」
「…そういうところですよ」
そう言うと、男はナイフを動かした。が、ピタリと動きを止めた。
「…想像以上でしたね」
〜
「でぼっ!まだっ!じにだぐないっ!」
その瞬間、グレンの体を優しい炎が包み込む。
「あったかい…力が!みなぎる!」
グレンを囲むように炎の渦が立ち昇る。
「そうか!これが魔力解放か!」
⚪︎魔力解放とは
固有魔法所持者にしかできない御技である。魔法本来の力を解放し、所持者に莫大な力を与える。が、魔力消費が激しい。使用中は見た目が少し変わる。
渦が収まり、グレンが現れる。傷が全て治り、瞳の赤目の部分が縦長になって猫っぽくなっている。
「オ前!何故ソレガ使エル!?」
「俺に聞くな。俺だって分からん。でも、一つわかったことがある」
「ナンダ?」
「これでお前に勝てる」
「妄言ヲ!!!」
魔力消費が激しいな。持って30秒か。早いとこ勝負をつけないとな。この再生速度なら、内側が燃えても再生できそうだ。
俺は一気に1秒100℃上昇から0.3秒1000℃上昇に上げた。
「秒で終わらせてやる」
「モウ打撃ハ効カンゾ!」
「忠告ありがとよ」
そう言うと、俺はロボに殴りかかる。
「馬鹿ノ、一ツ覚エダ!」
ピシッ!
ロボの装甲にヒビが入る。
「耐性ヲ貫通シタノカ!!!」
「まだまだ!」
俺はそのままロボを蹴り飛ばす。
ピシッ!
「反撃ヲ!!!!」
「残念だったな。俺の勝ちだ!」
ロボを蹴り飛ばした先には武器が大量に落ちていた。
「打耐性だけだよなぁ?」
「マッ、マサカ!」
「今度こそ…壊れてくれよ?」
俺は地面に落ちている武器をテキトーに拾い、ロボを攻撃する。
ロボが耐性を獲得するということがわかった時点でこの作戦を考えていた。しかし、自らの放つ熱と攻撃時の衝撃で武器が使い捨てになると考えたグレンは、拾って攻撃しやすいように、あらかじめ武器を一箇所に投げておいたのだ。
「獄炎舞踊!!!」
俺はロボが壊れるまで、ロボの周りを舞うように攻撃し続ける。
「俺ガ!コノ俺ガ!ポット出ノガキナンゾニィィィィィィィ!!!!」
「だから言っただろ?お前に勝てるって」
ピシッ!バキッ!グサッ!キィン!…
「壊れろおおおおおおおおおお!!!!!!!」
グレンはロボに攻撃し続ける。
が、突然、糸を切られたマリオネットように膝から崩れ落ちた。
「クッソ!魔力が!」
もう動けない。もしロボが動く様なら、今度こそ俺の負けだ。
ウィン
「まじかよ…まだ動けるのか」
ジジ…ジッ、ウィン…
「動ケルワケナイダロ。モウジキ音モ出セナクナルシ、何モ聞コエナクナル」
「それは良かった。生憎俺も指一本動かん」
「ナラ、火花散ラシテル俺ノ勝チダナ」
「ロボでも冗談言うんだな」
「…負ケダ。俺ノ」
「どーした!?頭でも打ったか?」
「頭ドコロカ全身ズタズタダ。相手ヲ認メナクシテ、成長ハナイ」
「人間よりも人間らしいな」
「…サヨナラノ時間ダ。次ハ俺ガ勝ツ」
「残念だったな。お前の辞書に勝利の文字は無い」
「イヤ…機能ヲ停止シマス」
俺は隣に転がっているロボの残骸に拳を合わせる。
「いい勝負だった。GG 」
そう言うと、俺は気を失った。
〜研究所内監視室〜
「良かったですねぇ。彼が勝って。もし死んでいたら…あなた達も死んでましたよ」
「ま、まさか本当に勝つなんて」
「おっ、おい!急げ!早く手当てをするんだ!」
「私はこれにて帰ります。では」
〜
「ふぅ…部屋ごと盾で囲ってなければ、ここ一帯吹き飛んでいましたね。またいつか会いましょう。」
「はっ!ここは!どこだ!?」
目が覚めると、俺はベッドで寝ていた。
どうやら、動けるくらいの魔力は回復したようだ。
「ここは研究施設内の医務室だ」
目の前には、10人ほどのドワーフが立っていた。
「まずは謝らせてください!」
「この度は、大変申し訳ませんでした!」
「制御機能の不具合で、命を危険に晒してしまいました」
普通なら記者会見レベルでやばいことだぞ。誤って済むかボケ!
「償いと言ってはなんですが元の金額より多めに出させていただきました。こちら、1500万円です」
まあ、死んで無いしいいんじゃ無いかな。そんなに謝らなくても。
あ、そうだ!完全に忘れてた!
「あの…武器全部溶かしてしまったのですが、弁償の方は…」
「滅相もない!もちろんこちら側の負担です!」
ふぅ…助かったぁ!
「それともう一つ。一緒にいた人たちはどうなったんですか?」
「ああ、彼らなら待合室であなたを待ってます」
「無事で良かった」
俺はベッドから起き上がる。
「もう動けるし帰ります。ありがとうございました!それと、待合室はどこですか?」
「それなら、ここを出て右に行ってもらって、エレベーターで一階まで行って右に曲がったところにあります」
「わかりました」
なんだかんだいい奴らだったし、ちょっと話してから帰るか。
そしてグレンは部屋を出た。