【9話】戦術
次の部屋は、学校の教室のような部屋だった。等間隔に席が配置され、正面には電子黒板がある。
なんも言われてないからテキトーに座っていいよな。多分。
俺は最前列の席の真ん中の席に座ることにした。理由は、不正行為を疑われないようにするためだ。まあ、どこの席に座っていてもこういうのは平等に見られるはずだが…
そんなことを考えていると、試験官が入ってきた。
グレンの頬を冷や汗が伝う。試験官はグレンが面接で喧嘩を売った奴だった。
うっわー…まじかよ。絶対こいつ立候補しただろ。それとも押し付けられた感じか?まあ、初めから決まっていたということを信じたい。そういうことなら諦めがつくしな。
「えー、今からテストを配ります。指示があるまで、絶対に開かないでください」
テストが座っている人の机に順番に置かれていく。
「えー、今から注意事項をお伝えします。机の上はシャーペン、ボールペン、鉛筆、消しゴムのみでお願いします。また、カンニング等の不正行為が見られた場合はその場でテストを回収し、回答を無効とさせていただきます。制限時間は60分です。それでは、、、開始してください」
パラパラパラ…
こんくらいか。絶対残り時間暇だろ。あと、試験始まった瞬間から刺すような視線を感じるんだが…まあ、怪しい行為はしないし大丈夫だろう。
ー10分後ー
あの自称頭いい高卒野郎はどうかしら?なっ!!!!!!もう終わっているですって!?ありえない!でもカンニングの動作も全くなかった!ずっと見てたもの!そんな状況でわたくしの目を欺くなんてできるはずがありません!まさか…本当だったの!?
俺はただ暇だった。なんの応用もない。ワークやテキストで見たような問題ばっか。こんなん答え写してるのとなんら変わらん。どうしよ…流石に堂々と寝るわけにも行かないし、座ったまま寝るか。
「時間です。答えの記入をやめて、筆記用具を机の上においてください」
は!?完全に寝てた。まあ、起きれてよかった。カンニングでっち上げられないかと思ったが、流石にそこまではしないか。
「次の試験ですが、着替えがある人は一階の待合室の左右の更衣室で着替えてください。扉にも書いてありますが、右が男性で左が女性です。着替え終わりましたら、男子更衣室横の武器庫で使用したい武器を選んだ後に、また待合室でお待ちください。それでは、各自移動を開始してください」
あー…着替える時間あったのね…なーんも持ってきてねえよ。荷物と上着だけ置いて、武器選びに行くか。
武器庫は割と広々としていて、武器は種類ごとに分けられていた。
うーん…弓はむずそうだな。銃も弾切れあるし、やっぱり安定は剣か。
うーん、どの剣にしよう?お!?この剣かっこいいな。装飾とかじゃなくて高級感で勝負してますみたいなシンプルなデザイン。よっし、これにしよう。
…暇すぎる。武器選びも早く終わったし、まだみんな時間かかりそうだな。どーしよ、入ってくる人一人一人に挨拶でもしていこうかな。そんなコミュ力はないが。1人で賭けるか。男子が入ってくるか女子が入ってくるか。よっし!次女子に1億ベル!
ガチャ
扉を開けて入ってきたのは男子だった。
ハハハ、マジの賭けなら破産だったな…
ー15分後ー
会場にアナウンスが響く。
「えー、それでは、全員揃いましたようなので全員を実技会場へ移動させます」
ヴゥン
床に描かれていた魔法陣が光り始める。
シュン!
「おお。これはなかなか…綺麗だな」
グレンたちは、だだっ広い森に移動させられた。
見たところ、俺ともう1人の女子以外は5人グループになって小さな魔法陣の上で固まっている。
再び、アナウンスが響く。
「今から、チーム対抗戦をしていただきます。チームは7チームあり、我々があらかじめ決めさせていただきました。しかし、各個人の得意不得意を考慮しておりますので、ご安心ください。今回は、同じ魔法陣内におります人達がチームです。1人だけのチームが2チームございますが、ミスではありません。故意です」
「は?」
説明中だが、思わず声が出てしまった。
「ルールの説明をいたします。この森の中に4つのレインボーストーンを隠しました。それを奪い合ってください。制限時間は60分です。制限時間終了時にレインボーストーンを持っていたチームの勝ちです。あと、死を避けるため、皆様にHP制のシールドを付与させていただきます。そのシールドが半分未満になった人は即脱落です。シールドの残り耐久値は開示と詠唱していただければ可視化できます。他人には見えないので、ご安心ください。シールドがあるうちは骨が折れるなどのことはございませんが、例えば腕などに骨折と同等のダメージを受ければ、その部位が動かなくなる仕組みです。しかし、回復魔法でその部位を治療すれば、シールド回復と共に腕の動きも戻ります。シールド回復は自然治癒も適用されます。シールドに痛覚遮断機能は付いておりませんので、ご了承ください。シールド量は各個人のHPにより異なります。最後に試験放棄と詠唱しますと、リタイアが可能です。それでは説明が終わりましたので、今から各チームをそれぞれの配置に移動させます。移動が完了し次第、行動を開始してください。ご武運を祈っております」
ヴゥン
「はぁ…今から奪い合いかぁ…ゲームもそうだけど視界取りがいるんだよ。それを1人でって…まあ、挽回するって決めたかやるしかないんだけどさー…はぁー、まじかぁ…」
〜別地点〜
「は!?1人!?前の大会で暴れすぎたのがいけなかった!?あぁあ…もう!!えぇ、やりますとも!こうなったら片っ端からぶっ飛ばしてやる!」
〜
まあ、とりあえず石探すか。オーバーヒートで上から探した方が見つかりやすいかもな…待てよ、こんな森で2000℃出したら森燃えるんじゃないか?あと空飛んで探すと目立ちすぎるな。探知しようにも魔力消費が激しいし。結構詰んでんな…あ!そうだ、隠キャ戦法しよう。残り20分で石持ってるチームから石奪って逃げる。それまでの40分はチーム全体の動きの確認だな。
俺は一番高くて見晴らしのいい場所を探す。
あの木か。
グレンは気配を消し、木の下まで向かう。
木までは5分歩けばいいくらいか。走って見つかっては元も子もないからな。魔法を可視化する魔法も発動しておこう。
俺は木の下まで無事に辿り着くことができた。
「また暇になるな…」
その時だった。
ジジッ…
グレンは拘束魔法に引っかかった。
「くっ!まあ、流石に…舐めすぎたわな」
相当腕の立つ魔術師がいるな。魔法を隠すのがうますぎる。いつの間にか囲まれてるしな。
「俺たち思ったわけ!漁夫の利するやつがいるんじゃねえかなって!そしたらまず情報収集だろうなって!んなら、んなら!この一番高いこの木だろうなってさあ!ストーン4つってことは3チーム落とせば終わりだよなぁ!?ぼっちが2チーム!まずそれ落とそうってワ・ケ。リタイアしてくれるならぁ、痛い目見なくて済むよ?」
「お前ら、なんで俺がソロか分かるか?」
「あ゛?」
「フルパだと相手にならないからだよ」
「あっそ。んなら死ね」
グレンを囲っている5人が魔法をチャージする。
「あばよ!ぼっち!」
「火炎竜巻」
「っ!!この感じはやばい!!!全員引けーーー!!!」
グレンを囲むように炎の竜巻が空高く昇っている。
ゴォォォオオオオオオオ!!!!
「ふぅ…まあ、先に森を魔法で燃やそうとしたのはそっちだよな。俺は正当防衛…と、いうことにしておこう。まあ、頑張って足掻いてくれ。雑魚ども」
「フフフ…やるねぇ…でもまあ、その程度って感じだよね」