プロローグ
…少し自慢話をしよう
人より物分かりがいいのは自覚していたんだが、保育園の時は周りより少し大人びているくらいだった。しかし、小学校から周りと自分の違いを明確に自覚し始めた。
同年代と話が合わないのだ
俺のする話が分からないし、面白くないらしい。
そのズレと、俺がエルフと人間のハーフということで孤立していた。
バカとか、病気とかそういうのではなくて、周りより明らかに知能が高かった。
あいつらもそうだったかもしれないが…はっきり言って気持ち悪かった。喧嘩になれば殴り、泣き、感情論ばかりで話にならない。
鼻水垂らして走り回っているガキも、いい子ぶってよく泣いている女子も、とても気持ち悪かった。
先生に相談したんだが、「周りに合わせなさい」だの「協調性がない」だの言われて話にならない。でも、父さんだけは違った。
俺が学校に行きたくないと言うと快く、学校に行かなくていいと言ってくれた。
中学に上がって、俺は期待していた。やっと周りとまともな話ができる!と。
でも結局同じだった。きちんと話はできないし、いちいち些細なことで喧嘩する。またしても、俺は不登校になった。
そんな俺に父さんはある提案をしてくれた。
「飛び級で行ける高校があるんだ。行ってみないか?まだ中一のお前には難しいかもしれないが…やってみるか?」
俺はワクワクしていた。やっと自分の力を出せる。そんな気がした。
「試験は1月にある。時間が少ない気がー」
「できます!俺は…やってみたい!」
試験の過去問や、そのための勉強はとても難しかった。でも、自分を変えられる気がして頑張った。
試験当日
「これより試験を開始する。不審な行動を見かけた場合は全ての回答を無効とする。それでは、始めてください」
俺は人生の中で一番頑張った。そして、一番楽しかった。
試験終了
「グレン…試験はどうだったんだ?やっぱり難しかったか?」
「父さん。多分…」
合格発表
「8065…8065…あ、あった!!!!!父さん、俺やったよ!」
「そうか!そうか!よかったなぁ!あの時手応えあったって言ってたもんな!もう中学生じゃなくて高校生になるんだなぁ。」
俺は合格した。全体で90人中16位だった。この時、頑張った分だけ結果が出ると言うことと、達成することの楽しさを知った。
入学の時、俺は怖かった。周りのみんながでかいのもあったが、また話が合わなかったり、一人で浮くのではないかと。
でもそんなことはなかった。なんなら俺より賢いやつや先生で溢れていた。この時、俺は2回目の生誕をしたような感覚になった。
高校生活はとても楽しかった。見た目でいじってくるやつもいないし、ちょっとしたすれ違いが起こった時も、きちんと話し合いで白黒つけていた。
体育の実戦授業も楽しかった。魔法学や薬学、錬成学で生かしたことをフルで使って、同級生と試合をする授業だった。
俺の固有魔法はあまり強くなかったが、クラスに一人ずば抜けて強いやつがいた。ボコボコにされたのを覚えている。
俺の固有魔法はオーバーヒート。時間とともに徐々に周りの温度が上昇し、それに比例して防御、反射神経、スピード、攻撃力が上がっていくというものだ。
強そうに聞こえるだろう?そうでもない。温度が40℃を超えると、人間はタンパク質が固まり始める。
この意味がわかるだろうか、俺の魔法は秒で10°C体温が上がる。要するに、4秒で危険になる。無理をしても90℃くらいが限界だ。解除と発動を繰り返せば、一定に保てるのだが、それでも10分が限界だ。
身体能力上昇に関してだが、90℃になると拳で鉄筋コンクリートの建物を壊せるくらいには強いし、速さも時速100キロくらい出るのだが、たかが10分である。いなされて終わりだ。
クラスでは中の上くらいだったのを覚えている。
そんなエリート高校を卒業した俺だが、現在、2年間ニート生活中である。ゲームしかやりたいことがなく、大学も行きたくなかったためだ。
最近は時間の移ろいもわからなくなってきた。カーテンはほぼ開けないし、自分の部屋から出ることもない。
起きてすることといえばゲームだし、飯もお父さんが部屋に届けてくれるから料理しに行く必要もない。
強いていうなら部屋から出るのは、風呂とトイレと歯磨きくらいだ。それ以外はゲームをしている。
「ちょっと来てくれないか?」
そんな気がしていた。流石にお呼ばれする頃だろうと思っていた。
「そこに座りなさい」
俺は黙って座った。父さんは眉間にシワを寄せて、言葉を捻り出すように一言。
「そろそろゲーム以外でやりたいことを見つけなさい」
「…そろそろ、っていうか流石に飽きていたとこっすね」
そう、俺自身も流石に飽きてきていたのだ。それもそのはず。2年間ずっとゲームしかしていなかったからだ。
「ちょっと町に出かけてみるよ。なんかあるだろ。あ、そうそう、大学は行く気ないよ。1週間で見つからなかったらプロゲーマーになるから」
「分かった。許容しよう。仕事を見つけるなら、一人で暮らせるような収入の仕事に就きなさい。」
「りょーかい」
町に行くと、色々な求人があった。店のバイト、ホスト、武器商人、武器職人、エンジニアなど
ホストかぁ、なれるだろうが続かないだろうな。武器職人もなぁ。別に武器なんぞ造りたくないし、エンジニアも別に…
その時、1枚のチラシが目に入る。
あ、完全に忘れてた!冒険者があったじゃないか!
⚪︎冒険者とは
他の国から資源などを集めたり、その国の困りごとなどを解決する職業である。
例を挙げると、モンスターを討伐したり鉱石を持ってきたり、誰かの護衛を行ったりと多彩である。
それには免許が必要で、それを偽ったり、売買するのは犯罪である。なぜなら、冒険者なら無料で飲食することができたり、宿を貸してくれるという施設があるからだ。
冒険者はギルドから出る依頼を達成することで、報酬(金や武器など)を得ることができる。
年に4回、3ヶ月に一回試験が行われる。
よし、やるか。試験はあと3日後か…
は?オワタ。流石に草。炎吐き散らすレッサーワイバーンが草育てるくらい草生える。
いや、でもこれ逃したら3ヶ月後だろ?流石に長いって!
自分で言うのもなんだけど俺は天才(元)だ。3日もあれば試験準備するくらい余裕だろ。
っしゃあ!燃えてきた。
久々に俺はワクワクしていた。