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シングルママ愛子 vol.94. 「琴の声、聞こえなく…。」
葬儀社に近づく事によって琴美の声はなくなっていった。
そして…、
「ママ…、ここって…???ここにモコおばちゃん…いるの…???」
愛子は遂に涙を止める事が出来なくなり、
葬儀社の駐車場に停め、車の中で琴美を左腕で抱き締めた。
「ママ…どうしたの…、どうして泣いてる…???」
鼻水を啜り、愛子は琴美に。
「琴~、このぬいぐるみ、モコおばちゃんに、ギュッと抱いてもらおう。ねっ。」
「うん。」
涙を拭いながら愛子は、琴美に、
「琴~、モコおばちゃんね…、もう…琴の声、聞こえなくなっちゃった。…ううん…、ママの声ももう聞こえない。…それに川じぃの声も聞こえなくなっちゃった。…そして…目も見えなくなっちゃった。そして…体も…冷たくなっちゃった。」
何も言えない琴美に愛子は続ける。
「琴…、そんなモコおばちゃんに、あいさつできる…???」
琴美は少し考えているようだったが…、やがて…。
愛子の顔を見て、愛子の頬に伝う涙を見て…。




