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シングルママ愛子 vol.92. 琴美の愛情表現。
そんな川岸との電話が終わって琴美の方を見ると、
琴美が何やら可愛いぬいぐるみを抱き抱えて持っている。
「琴…それって…。」
「うん、琴がお気に入りのぬいぐるみの一つよ。これね…、モコおばちゃんにあげようと思って、持って行く。病院でモコおばちゃん、ひとりっきりで寂しいから…。」
愛子はそういう琴美を見て、少しまた瞼が熱くなったのだが、
何とか堪えて、琴美に、
「そっか…、良いかも…。琴…やさしいねぇ。」
「モコおばちゃん、喜んでくれるよね。」
そんな風に愛子に話す琴美に、愛子は、懸命に笑顔で、
そして何も言わずに、うんうんと首を縦に振るしかなかった。
基子が死んでしまった事を、まだ琴美には言えずにいた。
葬儀社に向かう車の中でも琴美は、
ぬいぐるみと基子の事ばかり話していた。
「この子がいればモコおばちゃん、さびしくないぞ~!ルルちゃんはモコおばちゃんのお友達だぞ。」
そんな琴美の頭を愛子は撫でながら…。




