9/176
シングルママ愛子 vol.9. 掛け替えのない家族だから…。
一方、愛子の家族構成は姉がひとりと妹がひとり。
そして両親は母親だけが存命である。
しかし…その母親は既に高齢で九州は鹿児島に姉と共に生活している。
妹は現在オーストラリアに結婚して住んでおり、
既に外国人として帰化している。
そのために、残念ながら愛子の肉親は新谷のための葬儀には、
参列する事が出来ずにいたのだった。
ただ、新谷家の親族以外に、会社関係と友人知人が多く、
新谷家には葬儀の流れの段階から人の出入りが多かったのである。
それほど新谷夫婦の日頃の人付き合いと言うのは、
周囲からも好まれていたのであった。
その中でも川岸の献身的な愛子を気遣う姿勢は、
周囲も感心してはいたのだ。
けれども中には川岸の妻の事を気にしながら、
度を超していると言う意味合いも含まれていた事は確かであった。
川岸としても、そういう意味合いを感じてはいたが、
それよりも何よりも、新谷家のためだけに動きたいと言う思いが大きかったのだ。
自分に掛け替えのない家族とも感じていたからだった。