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シングルママ愛子 vol.86. 哀しみに暮れながら…。
今まで哀しみに暮れていた川岸が椅子から立ち上がり、
洗面に向かい、涙に暮れた顔を洗い、
そしてゆっくりと窓際に近づいて外を見る。そして項垂れる。
そんな川岸を見て、そして基子を見て小さな声で、
「モコ。」
と、返ってくる声などない事を分かっていながらも、
そうしないではいられない愛子。
そしてもう一度基子の頬を撫でながら…、
そして後ろを向き、川岸の背中にポツリと…、
「川ちゃん。」
川岸は黙ったまま、すぐに言葉は出てこなかった。
そんな川岸の気持ちを察してか、愛子も口を噤み…。
そして川岸がようやく、口を開く…。
「愛さん…。わざわざありがとう。俺…無意識に愛さんに電話してたんだ…。」
「分かってる。…でも、それで良かった。…モコに…遭えたもの…。」
「俺…何が何だか分かんなくなってた。この前まで、こんなんじゃなかったって言うのに…。ただ、少し咳が出てたんだ。それに…、少し…、表情も暗かった。」
「…そう…だったんだ。」




