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シングルママ愛子 vol.53. ここって何処…???誰…???
逆に言えば、川岸あっての新谷家と言っても過言ではなかったのである。
そして、その事が、今の愛子には、
「何とか動いていられる。」
と言う、いわば、主の側近中の側近と言う感じだったのである。
「あっ、これ、川ちゃんお願い、私…無理。」
「…ん…???はいはい、これね。新しいトコですからね。愛さんには無理ですねこれは。」
「…と~これも…。ここって何処…???…で、誰…???」
「はい…???あ~これも僕と栄さんしか分からない。これも私がゲットです。」
実際、香典を戴いても、中にはその場で香典返しが間に合わない場合もある。
それが会社関係であれば、愛子にはどうしようもない事になるのだった。
そういう場合は、川岸に頼るしか術はないのだった。
相手に失礼であってはならない。
生前の栄二の言葉でもあった。
ゆっくりゆっくりと整理は進み、
次第に残すは栄二の新谷家の物品処理だけとなって行った。
数日が掛かっていた。
「ほい、川ちゃん、お疲れ様、たま~には冷たいの。」
川岸に缶ビールを手渡し、
「嬉しいっすね~戴きま~す。」