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シングルママ愛子 vol.5. 川岸くん、主人は…???
「奥さん、愛子さん。」
遠くから自分の名前を呼ぶ声…、
それがだんだん近づいて、ようやく我に気付いて、目を覚ます愛子。
その顔を見て「ママ~!」愛子の傍に駆け寄り、涙を拭う琴美。
「ごめんね、琴…、ママ…倒れちゃった。!!!!パパ???パパは…???」
「奥さん、愛子さん。」
琴美の後ろで静かに立っている川岸が、
哀しい顔をして…、目に涙を溜めながら…、
鼻水を一生懸命に啜りながらも…。
「すみません。申し訳ありません。課長が、課長が…。」
「川岸…くん…、主人…は…???」
「すみません、すみません。」
その言葉を言いながら、思わず土下座する川岸。
「どうして…、川岸…くん、そんな事…するの…???主人は…???パパは…???」
その時、ドアが開き、先ほどの医師が部屋に…。
その顔を見るなり、思わず目が潤み、瞼いっぱいに…。
そして頬を伝い、傍にいる琴美を強く抱きしめ…、
嗚咽の如く…琴美の名前を何度も呼びながら…項垂れる愛子。
「気をしっかり、奥さん、新谷さん。お子さんがいるんですよ。」