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シングルママ愛子 vol.48. やがて…低い声で…。
そんな事があってからか、
栄二は基子に会う度に愛想を振りまいてはいても、
心の中ではある種の影を落としてはいた。
けれども、そんな自分の事を一切、
今まで通りの基子の自分への振る舞いを見て…、
だからこそ、基子をある意味では、自分の妻の妹同様として、
可愛がっていたのだった。
基子にはそんな栄二の気持ちが痛い程分かっていた。
「あのとき…、あんな事があったばっかりに…。栄さん…。でも、私もあのときから…栄さん…、好き。なのに…どうして…。」
そして、掛布団を顔までしっかり掛けて…、
やがて、低い声を出して泣くのだった。
「そうだったの、でも、基子、体調は別に、なんともないのね。」
「ええ。何とか、その辺は…、気になっていたんですけど、特になく…。」
「うんうん、ありがと。じゃ、私も落ち着いたら基子に行ってみるわ。私からだって、話しておかなくっちゃ。それに、琴美も基子の事、顔見たがっているし…。」
「すみません、お願いします。」
「今日は本当にお疲れ様、川岸君がいてくれて本当に助かった。まだ、やること残ってるけど…。」