44/176
シングルママ愛子 vol.44. 「…栄さん。」
「えっ…???もう栄二の事も…???」
「実は…、話の成り行き上…、今回の話まで…。」
基子は静かに、ベッドに横になっていた。
横にはなってはいたが、中々眠れずにいたのだった。
数時間前に、夫の利信から飛び出した栄二の死に、
ある種、ショックを隠し切れずにいた。
ただ、それで基子の体調に問題は…、と言うと、それほどでもなく…。
けれども、夫が部屋を出た後にも、何故かしら瞼を熱くし、
目尻から涙が零れ落ちたのだった。
数時間前の夫の言葉に…、
「死んじゃったんだ…栄さん。」
「うん、いきなり…、突発的な事故だったんだ。今でも信じられないんだけど…。死んじゃったよ栄さん。」
川岸夫婦と新谷家の家族との間では、
それぞれの相手の呼び名も気楽でざっくばらんな感じが、
関係をファミリーっぽくしていたのだった。
ある意味ではその方が話しやすいと言う面を、
大切にしたいと言う栄二の思いがあり、
フレンドリーな感じでお互い、それぞれを呼び合っていた。
そのために、生前、栄二も川岸夫婦の事を、
「川」と「モコ」で呼んでいた。