41/176
シングルママ愛子 vol.41. 慶子の口から「彼」
「…ん…、愛子さん…、どうかした???」
一瞬、焦点が合わなく、心ここに非ずの愛子に慶子が、優しく微笑み返した。
「えっ、あっ、ふふ…何も…。」
突然、胸がドキンとした瞬間だった。
そして、すぐさままた心の中で…、
「ばか…何考えてんの私…???そんな事…あるはずないじゃないの…。」
慌てて、台所に向かおうと立ち上がろうとする愛子に、
「ねぇ…愛子さん。」
「あっ…、はい。」
「彼…良くやってくれたわよね…、みんな…安心してられたわよ、このお葬式。立派だったわ。」
慶子の口から「彼」と言う言葉が出た瞬間に、
あらためて愛子の頭に「川岸」の顔が浮かんだのだった。
愛子も突然のその言葉に…、けれども、それほど表情を変える事もなく…、
「彼…???ああ川岸さんね、主人の右腕みたいな存在の人だったの。」
「そうなの…それで…。」
軽く慶子にお辞儀をして、その場から一旦台所に向かう愛子。
あれだけ人の立ち振る舞いの中でも、乱れた事がある訳でもなく、
却っていつもより、綺麗に整えられている台所に…、思わず…、
「やられたな…。」
と、苦笑いをする愛子。




