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シングルママ愛子 vol.4. 主人は、つい先ほど…。
「琴ッ!パパ大変。これから病院行く。」
病院のドアを開け、廊下のソファに両膝にうずくまっている川岸を見て、
そんな川岸に歩きよる医師。
「先生…。あっ、奥さん。丁度良かった。」
川岸に挨拶をして、そして医師に向かって。
「先生、主人は、新谷は???」
母を見上げている琴美を支えながら川岸。
「奥さんですか???」
「はい、妻の新谷愛子です。電話で報せを聴いて今、着いたばかりなんです。」
「そうですか。…残念ながら…、ご主人は、つい先ほど、息をお引取りになりました。手の施しようのない状態でした。お気の毒です。」
不運にも内臓破裂、その上に、鉄パイプの落下によって、頭蓋骨陥没。
救急車の中でも、殆ど意識のない状態。
ただ、心臓は動いていたのだが、病院に到着し、
それからわずか数分後にはその心臓も停止していた。
その医師の声を聞いただけで、血の気が引き、蒼くなり、その場に跪く愛子。
そして、そのまま…、気を失うのだった。
医師と川岸の、
「奥さん、奥さん、」
と言う声をおぼろげに感じながら…。