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シングルママ愛子 vol.38. でも…心は…。
「つまりは、彼女の娘さんとだけの生活に少しでも、慰め程度の世間話。…ある意味では寂しさを紛らすためのね…。」
「……。」
「それに、子供だって、今まで毎日見てた父親の姿が、突然消えたんだもの、あとはもう母親だけ…。」
「そう…よ…ね。」
「今まで母親の事を声大きくしてママ~って呼んでいたのだって、その声だって、小さくなって…ママ…って。外にも出たくなくなって、それに家の中にいれば、出来るだけ、母親に縋っていたい…。」
「うん…。」
「毎日がそんな感じ…、夫が会社の部長さんだったから、完璧に専業主婦。生活面としては、全く不自由のない生活…なんだけど…。でも…心は…空っぽ。」
「……。」
「そんな日が毎日…。」
慶子の話を聞きながら、愛子はゆっくりと自分の子供、
琴美の事を思っていた。
「友達から電話での世間話だって、そんなに続くはずってないのよ。時と日が過ぎればね。でも、その中でも変わらずに電話をくれる人がいたの。それが…彼…。」
「うん…。」
「電話の内容なんて、簡単なものなのよ。さらりとした内容の事ばかり。」