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シングルママ愛子 vol.34. 何かに躓いたのね。
「あっ、愛子さん…、ごめんね…こんな時に…、こんな話しちゃって…。」
「ううん…、とんでもない、逆に聞きたいわ。」
祭壇の前で、舅と姑は栄二の真顔の写真を何度も見ながら、
中学生の子供たちの遣り取りを窺っていた。
義理の兄の栄一は親戚の叔父や葬儀に駆け付けてくれた従兄弟と、
栄二のために、酒を汲みあっていた。
「その夫婦、結婚して5年でようやく子供が出来た、そしてその子もすくすくと…。小学校に入って、そして次の年、2年生になったその夏。旦那さんの会社、好調だったのよ。」
「うんうん。それで…。」
「その好調が功を奏して業務拡張、工場を大きくしたの。」
「へぇ~凄いのね。」
「うん、元々が大きい会社だったから、それ以上に…。でも、そんな中…、工場の建設中に、工事現場を会社側の幹部たちが見回っている途中、何かに躓いたのね、思わず前のめりになって転倒したと思ったら、体が自然に転がって足場から落下。驚いて会社の幹部たちが地上に駆け降りた時にはもう…。」
「…そんな…。」