25/176
シングルママ愛子 vol.25. 祭壇の前で…。
火葬後、愛子が自宅に帰った後に、
台所を預かっていた友達に聞いたところによれば、
出棺後に、留守宅を預かっていた栄二の父親が、
常に、祭壇の前で胡坐を掻きながら、余り動く事がなかったと言う。
その事を聞いた愛子は、すぐさま義理の父親の前に正座し、深く頭を下げた。
「お義父さん、ありがとうございます。私が栄二さんの傍にいながら、こんな事になって、本当に申し訳ありませんでした。」
真顔で義理の父に詫びる愛子を見て、栄太郎は、
「愛子さん、頭上げてくんねい。わしゃ、栄二に最後の別れしとっただけじゃい。見事な葬式じゃった。ほれ、栄二もそう言っておるがの。」
その言葉に愛子は再び、涙が出て止まらなかった。
そんな愛子の姿を見て、栄太郎は、
か細くも農業で鍛えた手で、愛子の左肩を優しく擦るのだった。
そんな光景を傍で見ていた栄二の母、頼子も、
涙を流しながら、愛子を見て、頷いていた。
「愛子さん、栄二の事、本当にありがとう。」
そんな目をしながら…。