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シングルママ愛子 vol.24. 「琴のパパ…。」
「琴…パパに最後よ…。」
と、母に言われ、そして自分の目で棺の中に、
白い姿で納まっている自分の父親の顔を見て…。
小学2年の女の子とは言え、変わり果て、
目も開けない、口も開かない。
箱の中に入っている父親の顔を見て、
初めて知った、自分の知らない世界を、
父親がいなくなった事の現実を、
小さな目で、小さな体で、実感したのであった。
言葉には表せない。不思議な気持ち。こころの中で、
「琴のパパ…もういない…。」
悲しいけど、その悲しみを母の愛子に縋るしかないのだった。
琴美を床に降ろした後に、声もなく琴美の両肩を優しく撫でる愛子、
琴美の両肩を撫でながらも自分も目を真っ赤にして、
拭っても拭っても止まらない涙。
立っているのが精いっぱいの中で…。
静かに棺は家の外に出て、霊柩車の中、
ゆっくりと走り出すのだった。
火葬の立会は愛子と琴美、そして川岸と栄二の兄が先に立ち、
その他には栄二を特に慕っていた会社の社員数名と、
愛子の友達とが同行した。