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シングルママ愛子 vol.20. 「でもさ、川じぃ。」
「そうだね…。ママ…今、元気ないよね。」
「どうしてママ…元気ないの…???」
「琴ちゃんとおんなじように、少し、疲れているんだ。」
「ふ~ん、疲れているんだ…。」
「そう…、だから、元気のないママの傍に着いていてあげなきゃね。それ…琴ちゃんのお仕事だよ。」
「うん、わかった。…でもさ、川じぃ、パパ…いないよ。どこにいるのかな、琴、ずっとあちこち見ているんだけど、パパいないの。」
「そうだね、パパ、いないね。どこに行ったのか、川じぃも知らないんだ。」
「ふ~ん、川じぃも知らないのか。でも、パパのおっきな写真がお部屋にあるんだけどな。パパどこなんだろ???」
川岸は琴美の話を聞きながら、
次第に瞼に熱いものが込み上げてきた。
それを琴美に見られないように、
「そうだねぇ、パパどこなんだろうねぇ。」
と、言いながら、軽いその体を持ち上げ、腕に乗せて、
新谷家の庭を眺めたのだった。
丹精に整理された新谷家の庭、丁寧に整理され、
配備された植樹も、何かしら栄二の追悼の意を表しているようにも感じられた。