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シングルママ愛子 vol.19. 「でも…ママが…。」
抵抗がないと言えば嘘になるのだが…。
敢えて琴美から自分をそう呼ばれた事に、川岸にとっては、
徐々にその言葉にも馴染んでいったのだった。
つまりは、小さな子供からそういう風に呼ばれた事など生まれてこの方、
一度もなかった。…というよりは、
そういう小さな子供との接触すらなかったからである。
そんな中で栄二と愛子の愛娘を実に、
自分の娘のようにも可愛いと思った川岸の胸の中では、
自分に懐いている琴美の、自分に対して呼ぶ「川じぃ」にも、
愛着を感じ始めていたのである。
数名の女性がいる台所に、
「さぁ~琴ちゃん、ジュース、ジュース。」
と、言いながら冷蔵庫を開け、
「どれにする~???」
と、琴美に選ばさせて、
「これ良い。」
と、琴美がオレンジジュースを手にした。
テーブルに座らせて琴美にジュースを飲ませながら、
また琴美の顔まで自分の顔を下ろして、
「琴ちゃん、疲れただろう~???」
そんな風に、琴美に質問しながら、琴美も、
「…ん~少し…。でも…ママが…。」
「えっ…ママが…どうしたの…???」
「元気ないの。」
と、ポツリ。