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シングルママ愛子 vol.16. 大人目線の大人たち。
つまりは例え、親族の家ではありながらも、
勝手の分からない青森の家族であった。
新谷家の本家と言うべき家は東北、青森である。
一年にお盆や正月などで親族が集まるとなれば、
凡そ青森の実家に親族は集まる。
そのために、まず滅多に本家以外の住まいに、
足を運ぶと言う事はないのだった。
それ故に今では新谷家の場合、
会社関係や栄二や愛子の友人知人の方が、
逆に新谷家の勝手を心得ているのだった。
そういう意味ではひとりぼっちでいる、新谷家の愛娘の琴美は、
いつも顔見知りの大人たちが自分の周りを、
忙しそうに動き回っている光景を見つつも、それが何のために、
そして肝心の昨日まで自分の傍にいたはずの父親の姿が見えない事に、
不安を抱えて、逆に涙が出ずにいた。
そんな中で、自分の父親と母親以外に、
もうひとり、自分の両親と同じくらいに自分を可愛がってくれ、
自分のおじちゃん的存在だったのが川岸利信である。
周りの大人たちが琴美の近くを通り、行きすぎ、
そして琴美に挨拶したり、少しでも声を掛けたりはしていたが、
その殆どが大人目線だったのである。