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シングルママ愛子 vol.15. 動き回る人たちの中で…。
気付けば、病院から自宅へ戻り、それから現在まで、
愛子は元より、新谷家の一人娘たる琴美の存在。
まだ小学二年の琴美の存在は、周りの圧倒的な大人の景色に、
その存在が如何に小さなものかと言う事を考えさせられるのだった。
しかも、そんな小さな体に、今まで全くと言うほど、
見る事のなかった光景が目の前で行われているのである。
そして、そこには一番の自分に対しての、
大きな存在感でもあった父親の姿がないのである。
ただ、自分を守ってくれるはずの母親が、
傍にいてくれている。ただそれだけで…。それなのに、
そんな中で周りは様々な大人の動きだけが見えるだけだったのである。
確かに、親戚の従兄妹はいたのだが、共に中学生である。
しかも、余り生活習慣のない東京と言う場所の中で、
中々思い通りには体が動かない。
それに、青森の家とは違い、何処をどう動けば良いのかも分からずに…。
それ故に、たまに会う琴美にさえも、単に顔を見合わせる程度で、
中々身動き出来ずにいたのであった。
確かに、そんな中で親たちも、
「あんたたち…。」と従兄妹たちに声を掛けるのではあったが…。