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シングルママ愛子 vol.14. 掛け替えのない分身。
通夜から葬儀まで、慌ただしく時間が流れていた。
新谷栄二の親族と言っても、青森の兄夫婦と両親、
それに子供たちと…。他には両親の兄弟姉妹がわずかに数名であった。
親族的には細々としてはあったが、
新谷栄二と愛子を取り巻く会社関係と、
知人友人の新谷家への出入りが朝から晩まで連日多かったのである。
哀しみに暮れる愛子にとっては、
自分たちに突然起こった現実に直面しつつも、
何かをしなければならない…、とは思いながら、
中々考えた事を行動に出すと言うのも体が動かなかったと言うのが正直だった。
日に何度も、会社関係の人や知人や友人に勇気づけられ、
慰められしながら支えられ、その度に何度涙を浮かべながらも…。
傍にいる愛娘の琴美だけが、
今は掛け替えのない愛子の自分の分身でもあったのだ。
そんな光景を見ながらも、川岸も時々愛子の表情を見守りながら、
時間は流れて行くのだった。
「琴ちゃん、疲れないかい???」
愛子の傍を中々離れない琴美。言葉なく、
ただ頷くだけの琴美。父親を失った幼子の…、哀しみよりも、
何がどうなっているのかが分からないと言う情況が琴美の体を占めていた。