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シングルママ愛子 vol.134. 愛子の状態。
その声で川岸は我に返る。
その男性を見ながら、顔で、「ありがとう…。」の意思を…。
そして頭を少し振り、左肩や左側に少し違和感を感じながらも、
すぐさま自分の右脚の大腿に置かれてある愛子の腕を見て、
「愛さん、愛さん、愛さん!!!」
愛子の背中に右腕を回して愛子の意識を確かめる。
川岸に体を揺すぶられて、ようやく愛子も意識を取り直す。
男性は2人を見て、
「大丈夫ですか、怪我は…???」
川岸はその男性を見て、
「ありがとうございます。僕はそれほどでも…、けど…。」
運転席側の愛子、上半身は別状ないように見えるが、
右側からの衝突のその激突の拍子に、
ドアの前部分から半分近く内部にのめり込んでいた。
「川ちゃん…足…、右足…。」
見れば、愛子の右足はアクセルペダルとブレーキペダルの間に挟まれて、
手で引っ張って抜けるような状態ではなかった。
そして愛子が続ける。
「川ちゃん…琴…、琴…。」
そう言われてすぐに川岸は蒼褪めて、
後部座席に目をやる。
「琴ちゃ―――んッ!」