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シングルママ愛子 vol.128. 恵美子と友恵。
テーブルの上の携帯が鳴る。
「ママ~携帯鳴ってるよ~!」
母親の携帯に出ちゃまずいと、
朝練から帰って汗だくの体にシャワーを浴び、
トレパンとTシャツに濡れた髪をバスタオルでゴシゴシと乱暴に乾かしながら、
台所で日曜日の午前中のアニメを観ながらの中学1年の芳美が言う。
リビングで掃除機を掛けていた恵美子が、
「はいはい、はいはい。」
と、走りながら台所のテーブルの上の自分の携帯を取り、
横目で芳美の恰好を見て、
「何、その恰好!」
と、言いながら椅子の端っこに乗せている右足、
その膝に手を当てて、電話の相手を確認する。
「はいはい友恵…おはよう。…うんうん…。うん…。」
会社の同僚、野崎友恵である。
「…て、言うか~愛子さんの気持ちはもう決まっちゃってると思うんだ。うん…、この前のでね。あとはやっぱり…川岸君の気持ちだけなんだよ。私も何とかしたいんだけどさ。いきなりって言う訳には…いかないからさ…。やっぱ…。うんうん。そう…。」
公園のベンチ、幼稚園に入り立ての香澄を連れながら愛犬と散歩中の友恵、
「うん、分かった、じゃね~!」