シングルママ愛子 vol.12. 一人娘…理美。
新谷健三郎にはひとりの子供がいる。名前を理美と言う。
小さな頃より、型破りな性格で、自分の決めた事は何であれ、
やり通すと言う性格の娘であった。
その性格はむしろ鉄砲玉とも思われるもので、明日は何処へやら…。
まず家に大人しく納まると言う事など決してなく、
ましてや自分の家を継ぐと言う事など有り得ない。
仕方なく、健三郎は「お前の好きにやってみろ。」と言う風に、
娘を好き放題にさせているのであった。
但し、けじめだけはけじめとして、
「この家に、お前の住む場所はないぞ。」と、言い渡していたのである。
一人娘が家を飛び出し、正に自分流、だが、この家の将来は…。
そう考えれば、必然的に甥でもある栄二に継いでもらった方が賢明だったのである。
そして後に、それが現実の事となり、
やがて、健三郎はある時、ひょんなことで風邪を拗らせ、
不運にもそれが切っ掛けで肺炎へと繋がり、
数か月で生涯を閉じてしまったのである。享年70歳。
懸命に夫を支えながらも、常に笑顔で優しく廻りの人に接していた妻の麗子も、
生涯のパートナーである夫を失い、一気に老け込み、
健三郎の死後、翌年には夫を追うように息を引き取った。