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シングルママ愛子 vol.105. 川岸の肩。
亡き夫、栄二の部下でもあった会社の社員たちも、
新谷元課長の奥様と言う意識はあったのだが、
それでも、以前の栄二の葬儀とは全く異なる雰囲気で接してくれたために、
社員も上司も気兼ねなく葬儀に参加する事が出来たのだった。
琴美と言えば、特に大人たちが気を留める事もなく、
大人しく振る舞っていた。
時には川岸に付き纏いながら、そして愛子の傍から離れる事もなく、
またひとりで葬儀社の中を見学しながら、
その度に葬儀社の女子社員と時々お喋りをしたりと…。
そして時には基子の母親の香苗と一緒に遊んだりと、
葬儀社での時間を小学2年生なりに過ごしたのだった。
葬儀の流れは以前の新谷栄二の時と同様に予定通りに過ぎて行った。
そんな葬儀の中で、棺の中の基子、そして火葬の前の棺、
そしてその後の棺の中…、
その度毎に、天井を見ながら、時に目を閉じ、
時に目を赤くして基子を偲んでいる川岸は常に肩で泣いているのだった。