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シングルママ愛子 vol.103. 愛子の脳裏に…。
そんな風に係の女性の目に映ったのは極々自然だった。
部屋の中の雰囲気が、自然に見ても、
夫婦とその両親そのものだったのだ。
その4人の姿を見て、係の女性の目が少し戸惑いのある動きをしたのだった。
その女性の目をふいに見て取った愛子が、
「あっ、」
と思い、姿勢を正した。
自分の姿勢があたかも、自然に川岸の体と寄り添い合っていたのを、
愛子自身が気付いたのだ。
その瞬間、ふと愛子の脳裏に過ったのが、
栄二との葬儀の後の義理の姉の慶子との会話だったのだ。
「彼…。」
しかし…、そんな愛子の脳裏を過った思いは、
目の前にいる基子の両親の顔を見て、
そして係の女性の顔を見るとすぐさま消えてしまった。
係の女性は、これからの家族のお世話をいろいろと確認し、
愛想良く部屋を出て行った。
けれども、部屋のドアを閉めてすぐに、首を傾げて、廊下を進んで行った。
その後、川岸は葬儀社を出る事はなく、
基子の元に付きっ切りになっていた。
基子の両親が川岸の自宅に赴き、準備をし、
愛子も一旦帰宅し準備をしてまた葬儀社に戻ったのだった。