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シングルママ愛子 vol.10. 川岸にとって新谷家は…。
川岸にとっては周囲の人から見ても、
「あの人だから、新谷家にしても、あれが普通なんじゃない。」と言う、
いわば周知の如く。
実は新谷家は、 元々新谷栄二、愛子夫婦の家ではなかったのだ。
栄二が大学に入学と同時に上京し、
その時に大手建設会社の取締役でもあった栄二の叔父の家に、
将来はその建設会社に入社と言う事まで約束されての、
いわば居候的な感じで叔父の家に住んでいたのである。
叔父の名は新谷健三郎。出身は栄二の両親と同じく東北は青森。
つまり健三郎は栄二の父親栄太郎の弟に当たる。
栄二が大学を卒業し、本格的に叔父の建設会社に入社し、
勤務と同時に、ひとりの若者が叔父の元に転がり込んできた。
その若者の名が川岸利信である。
川岸には母親はいない。若くして病死し、父親ひとりで川岸を育ててきたのである。
その父親が生前、一番頼りにしていたのが新谷健三郎なのであった。
不運にも川岸親子の生活は芳しくなかった。
父親の健康状態が悪かったのである