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支持率98%魔王とやさぐれ女勇者のカオスレイディオ  作者: 仙葉康大
第三章 Who is the most brilliant Radio Star?
23/50

勇者の忘れもの

 帰りの汽車に乗り、発進を待つまでの間、手持ち無沙汰になった私はウソコに昨夜のことを聞いてみた。


「昨日ラジオが終わったあと、ミーティアとガーナに何言ってたんだ?」

「サインをお願いしました。ほら、見てください」


 ウソコが取り出した二枚の色紙には、それぞれミーティアとガーナのサインが書かれてあった。


「サインなんてもらってどうするんだよ」

「部屋に飾るんですよ」

「ていうかお前、あいつらのファンだったの?」

「はい。『賞金女王ミーティアのマッハレディオ』は毎週欠かさず聞いてます」


 やっぱ人気あるんだな。聴取率の上位三組に入るって思ってたより難しいのかもしれない。


「あ」


 ウソコが突然、変な声を出した。


「どうした?」

「忘れ物をしてしまいました」

「何を?」

「大したものではありません」

「まあ、それならいいか」


 汽車が汽笛を空へ高く鳴らした。車窓の景色がゆっくりと流れていく。


 ふと、腰に心もとなさを感じた。


「ウソコ、預けてた聖剣、返してくれねーか。なんか腰が落ち着かなくて」

「それは無理です」

「は? なんでだよ?」


 沈黙するウソコ。嫌な予感がする。


「お前、まさか、大したものではない忘れ物って」

「はい、聖剣のことです」


 無表情、無感情にそう言ってのけるウソコの胸倉をつかみ、ぶん回す。


「ざけんなよ。勇者にとって聖剣以上に大切なものなんてこの世にねーんだよ。どうすんだよ、汽車もう出発しちまってるし。あ、次の駅で折り返せばいいのか」

「そんな余分な旅費ありません」

「なんでだよ。旅費は普通、余分に持っとくもんだろが」

「あとで郵送してもらえばいいのでは?」

「郵送なんてダメに決まってるだろ。途中で盗まれたらどうすんだよ。大体、色紙にサインなんかもらってるから、そんなドジ踏むんだよっ」

「でも仕方ないわよね。私のサインには聖剣以上の価値があるんだから」


 あり得ない声が車窓の外から聞こえた。


「ほら、バカ勇者、忘れものよ」


 箒に乗ったミーティアが現れ、ミーティアの肩に乗っていたガーナがその長い舌を使って、車内へ向かってものすごいスピードで何かを投げた。それこそ勇者の証。床に突き刺さった聖剣を引き抜き、私は口を開く。それを制するようにミーティアが言う。


「お礼なんて要らないわ。その代わり、今度ゲストで呼んだとき、ギャラ少なめにするから。いいわね?」


 今度。そうか。またいつか呼んでもらえるのか。

 顔をほころばせて私は言う。


「わかった。そのときはまたよろしく頼む」


 ミーティアが舌を出し、目をつむった。次の瞬間、トンネルの轟音と暗闇が一挙に車窓を埋め尽くした。


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