第三話 : 寄生/帰省
・木崎 : 主人公。会社員、女性。
・・一人称 : 私
・・呼ばれ方 : 姐さん
・おっさん : ホームレス(見た目)、男性。
・・一人称 : オレ、おっさん
・・呼ばれ方 : おっさん
『よう、姐さん。ずいぶん刺激的な格好だな?』
こんばんは。おっさん。来ちゃった。
『今回はまた、珍しいケースだな。感染……というよりは、寄生……乗り換え、だな』
気が付いたら、こんなだったの。
ここがどこなのかも分からないし、
誰も居ないし、
何も聞こえないし、
何も見えないしで、
ここまで来るの、大変だったのよ?
『だから言ったろう? 姐さん? オレに近づきすぎたらいけないって。ここに来ちゃいけないって』
だって、寂しかったのよ。
会社の男どもは、私じゃなくて、私の胸ばかり見るし。
『だからってな、住所不定無職のオレを養ってまで、寂しさを埋めようとすることはないだろう?』
だって、おっさんなら、ちゃんと私と向き合ってくれたでしょう?
『だから、姐さんの顔に張り付いてるソレみたいな、たちの悪いのに魅入られるんだよ』
ごめん、おっさん。お願いがあるの。
『なんだい姐さん? 言ってみなよ。姐さんには世話になったから、まずは聞くよ。でも、あんまり無理なのは断るよ?』
私を殺して。おっさんになら出来るのでしょう? どうしてか分からないけれど、今なら分かるの。
『…………姐さん、それは』
お願いよ。おっさんになら、構わないから。じゃないと、私……。
『ならば、その《未練》、我が断ち切ろう』
ああ、おっさん。それが、おっさんの本当の姿なんだ……。
『我は《死神》。進むべき道を間違えた憐れな御霊よ。その先の道を、今、刈り取ろう。そして、正しき道へ戻るといい』
ガイコツ姿のおっさんの大きな鎌が、振り下ろされる。そして、顔に付いたナニかが斬り裂かれ、不快な悲鳴を上げながら消滅していったのが分かった。
ありがとう、おっさん。これで、きっと……。
『もう、来るんじゃねぇぞ? 今回も、ちゃんと言ったからな?』
……ど、うかな? 私、もう……。
『お休み、姐さん。いい夢見なよ?』
……お休み、おっさん。ごめんね。
『もう、来るんじゃねぇぞ? 大事なことだから、もう一回言ったからな? もう、記憶にないなんて言うんじゃねぇぞ?』
……覚え、てたら、ね。ごめ……んね。…………さよ、なら…………。