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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

皆殺しのキリコ

作者: 雪河馬
掲載日:2019/12/21

小さな酒場に足を踏み入れると

ひとり・・・またひとり姿を消す。

2杯目のグラスを空ける頃には誰もいやしない。


わかっちゃいるさ。

奴らはあたいのことを疫病神だの死神だのと噂している。

ついたあだ名は”皆殺しのキリコ”だ。


あたいと寝たやつはみんな死んだ。

分厚い胸板のアントニオはドラゴンに襲われて丸焼けになった。

金髪の優男のトニーは魔術師に呪い殺された。


あたいのパーティもいつも全滅する。

生き残るのはあたいひとりだ。

だからあたいはひとりで戦っている。


「もうこの辺でやめときな。」

3杯目のおかわりをマスターに拒否された。

マスターは昔は名のある勇者だったそうだ。

魔王との戦いで足をやられて引退し、生まれ故郷に戻った。

今はこの町で、しけた酒場を経営している。

そして、あたいを恐れないただひとりの男だ。


「ねえ、マスター。あたいと寝ようよお。」


酔ってからんだあたいを、マスターは苦笑いをしながら軽くいなす。


「俺は客とは寝ないんだよ。ほら、さっさと帰りな。」


酒場を追い出されて、ふらつく足で町外れに向かう。

あたいの家は町から離れた一軒家。


「ただいまあ・・・」


誰もいない家の扉を蹴り開けてそのままベッドに転がり込む。

そのまま眠っちまった。


深夜、きな臭い匂いに目を覚ます。

町の方からだ。

外に出ると町が燃えていた。

ドラゴンの襲撃だ。

いそいで甲冑と剣を身につけて飛び出す。


しかし、町は聖職者が防御魔法で守ってるはずなんだけど・・・・。


近づくと首筋に産毛が見える。

レッサードラゴンだ。

あの程度なら、簡単に殺れる。


あたいは飛翔術で空に舞い上がり、背後からドラゴンの首筋に突き刺した。

断末魔の悲鳴を上げながらレッサードラゴンは地に堕ち斃れる。


町の奴らが遠巻きにしてあたいを見ている。

ドラゴンよりもあたいの方がこわいらしい。

そんなことはどうでもいい、賞金さえ手に入れば。


翌日、ギルドに賞金を受け取りに行ったあたいは、マスターが重傷を負って入院してるってきいた。

マスターは町の連中を守るためにドラゴンに向かって行ったらしい。

引退しても元勇者なんだな、マスターは。

そのおかげで被害は最小限で済んだ。


あたいはマスターのお見舞いに病院に行った。


「よお、来てくれたんか。ぶざまなとこ見しちまったな。」

「マスター、歳なんだから無茶はやめとけよな。」


マスターは珍しく照れたような顔で笑う。

「わりいな、やっぱ性分でな。お前だってそうだろうが。」

「あ、あたいは・・・。金のためだよ。」


マスターに痛いところをつかれてあたいは真っ赤になった。

そんなあたいをマスターは子供をみるような目で見つめる。


「はずかしいから、そんな目で見んなよ。」

「はっはっは。キリコ、お前は優しいやつだ。お前くらいの能力があれば王都で楽な暮らしができるのに、こんな駆け出しばかりの町に住んで皆を守ってる。」

「そ、そんなんじゃねえよ。」

「お前のパーティが全滅するのはお前が死神だからじゃない。他の奴らが弱すぎるからだ。弱いくせに自分の実力を過信している。俺は知ってるぞ、いつもお前が仲間を守ろうとして必死になってたのを。仲間の亡骸の前で大泣きしてたのをな。」

マスターにはお見通しだ。


あたいはこの町のやつらが好きだ。

弱っちい奴らばかりだけど、お人好しで、精一杯生きてる。

だから”皆殺しのキリコ”とよばれてもこの町に留まっている。


「なあ、キリコ。お前は王都へいくべきだ。行って魔王を倒してこい。じゃないといつまでたっても魔物は湧いて出てくるし、平和は来ねえ。」

「マスターは買いかぶりすぎだよ。あたいにそんな力はねえし、第一あたいがいなくなったら。」

「町のことなら心配すんな。お前がいない間くらい、俺が守っといてやる・・・・、ってこの有様じゃ心配か。」


マスターは豪快に笑った。

「まあ、やばくなったらお前を呼ぶから飛んで帰ってきてくれ。」

「でも・・・・・・・。」


まだ躊躇っているあたいにマスターは言った。

「お前がいるからこの町は守られているけどな。王都の近くまで魔王軍は進攻しているらしいぞ。な、キリコ。苦しんでいる多くの人を助けてやってくれ。」


私の心は決まった。

「ねえ、マスター・・・・。あたいが魔王を倒して帰ってきたら抱いてくれる?」


マスターは優しい目であたいを見つめる。

「ああ、とびっきりいい女になって帰ってきたらな。」

「約束だよ。」

「ああ、約束だ。」


家に戻って旅支度をする。

家の整理をして不要なものは燃やした。

二度と帰れないかもしれないから。


ひとつだけ片付けておくことがある。

あたいはこの町1番の大きな酒場に出向いた。

そこには昼から飲んだくれている、白いローブ姿の男の集団がいた。

あたいはそんなかのデブの男の襟首を掴んで引き倒す。


「お前がトーニか。」

「何をするんだね、君は。わしは聖職者じゃぞ。バチが当たるぞ。」


あたいはやつの顔がねじ曲がるくらいの勢いでボコボコにぶん殴る。

「この腐れ坊主が、昨日さぼって飲んだくれてたそうだな。てめえ死にてえのか。」

やつはひいひい泣き叫びながら許してくれと懇願した。


あたいは他のやつらに向かって大声で叫ぶ。

「お前らの顔は見飽きたし、あたいはこの町出ていくよ。死神がいなくなってせいせいするだろう。だがな、今回みたいないい加減なことしやがったらいつでもぶっ殺しに戻ってきてやるからな。覚悟しな。」


あたいは酒場の扉を蹴破って外に出た。

誰も見送るものはいない。


いいさ、あたいは皆殺しのキリコだ。

魔物をみんなぶっ殺してやるだけさ。



あまり異世界ものはむいてないんですが、久々に書いてみました。

実はプロットはず〜っと前から作ってたんです。


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