ライバル。
6月に入って、修学旅行があった。
何かしらなんとなくだが期待していたより遥かに、さわと接点がないまま終わってしまった。
そして気付けば7月になっていた。
7月から体育がプール授業になる。タツヤやリュウヘイは、
「水着♪水着♪」
と、エロ全開で喜んでいた。いや、そりゃね。オレだってね?ドキドキしますよ。そりゃ、男子なら誰だってそうだよ。好きな子の水着姿なんて、見たいに決まってる。
素早く準備を終えてプールサイドに出て行ったタツヤとリュウヘイが、直ぐに戻って来た。どうしたんだ?と思っていると、
「さわもミオも見学だった…」
と、見るからにテンションダウンしている2人だった。
「ははっ!残念だったなー」
オレは2人にそう言った。けど、自分に言っていたって方が合っているかも。いや、本当に、テンションダウンだわ。
だが、授業が始まると一変した。
さわとミオは、体調不良の見学ではなく、忘れ物をした見学だった。だから2人は、人使いの荒い事で定評のある担任達にこき使われていた。問題は、2人の服装だった。
たぶん、プールに入るつもりだったから、着替えやすいワンピースを着ていたのだ。しかし、その服装でプールサイドを歩き回るのがどんな事になるのか、2人は全く気付いていなかったのだ。
泳いでるみんなのサイドを、スカートをふわふわしながら歩いている。
リュウヘイとタツヤは大興奮だった。
「ヤバイ。水着以上にエロい!」
「見えそうで見えない所が、エロ過ぎ!」
なんて言って盛り上がっていた。が、たぶん、口には出さないけど男子みんな、同意見だったと思う。
「自由時間がチャンスだな。」
リュウヘイとタツヤがそう話しているのが聞こえてきた。
しかし、2人とも何で気付かないんだろ。と思って見てたけど、次から次へと仕事を与えられて、そんな事に気付く余裕がないんだろうな。と思った。
今は両サイドに分かれて、タイムの記録を取っていた。タイムを測ってる先生の斜め後ろ。それは、泳ぎ終わった人がプールから上がる時に、見えそうで見えない、絶妙な距離だった。
タイムの計測が終わると、自由時間だった。リュウヘイとタツヤがソワソワし出してるのを見て、オレは何だかちょっと、
「見せたくない。」
と思ってしまった。特にリュウヘイみたいな奴に。何とかリュウヘイにバレずに、スカートの事を教えれないか考えた。
自由時間になると、2人はプールサイドで監視役をするはずだ。定位置に着く前に何とか伝えたい。
なんて考えているうちに、最終組が終わって戻って来てしまった。
リュウヘイのソワソワはマックスだ。さわの動きを見ると、ラッキーな事にオレに近いサイドの監視っぽかった。あぁ、考えがまとまらない内に自由時間が始まってしまった!
その時、視界の隅で、レンが足早にさわの方へ行くのが見えた。
「負けたくない!」
そう思って、オレはもう考え無しで、潜水してさわの方へ近付いて行った。
適当に浮き上がると、さわの姿が近くに見えた。歩き方からすると、まだスカートの事には気付いてなさそうだった。レンの姿も、パッと見、居なかった。
オレは急いで、さわに向かって水をかけた。
「わっ!」
さわはそう小さく叫んで、オレに気付いた。
「何忘れたの?」
オレが話しかけると、さわはプールサイドにしゃがんで、
「プールキャップ。」
と言った。この時は流石にスカートを気にして、中が見えないようにしゃがんでいた。ざんね…いや、安心した。本当に。うん。
オレはリュウヘイが狙っている事を伝えて、リュウヘイにバレない内にその場を離れた。
さわと逆のプールサイドに着くと、リュウヘイとシイがさわの近くにいるのが見えた。さわはスカートをちゃんと気にしていた。良かった。間に合った。
「ジュンペイ、今さわに教えに行ったの?」
プールサイドに座って、ホッとしていたオレにレンが話しかけて来た。
「オレも行こうとしてたんだけど、誰かと話してるのが見えてさ。誰かと思ったらジュンペイだった。」
バレてた。でも、リュウヘイにはバレてなさそうだった。
「あいつの事、好きなの?」
レンは直球で聞いて来た。
「レンこそ、教えに行くって事は、好きなんだろ?」
オレがそう言うと、
「って事は、好きなんだ。」
と、レンは言った。コイツ…どこまでも攻めて来るな。オレはちょっとイラっとして、
「お前には負けねーから!」
と言い放って、プールに入ってレンから離れた。
「もしかしたら、もしかするかも。」
その期待は、見事に打ち崩された。
レンはやっぱり、さわだった。