自覚。
姉ちゃんのおかげで、自分の情緒不安定の原因がしっかり分かってスッキリしたオレだったが、恋って自覚したが為に、新たな悩みが出来てしまった。
それは、意識し過ぎてしまう事…
意識し過ぎて、普通に出来ないのだ。
みんなで話したりは出来るけど、2人でってなると何話していいか分からず、会話が続かなくなるのだった。
それに、さわはもともと、自分から話しかけるタイプじゃ無かった。だけど、話しかけられたら誰とでも話せるタイプで、それは男女問わずそうだった。
だから、自分から話しかけるタイプのリュウヘイや緑川なんかとは、かなり良く話していて、しかも楽しそうに話しているもんだから、2人がオレのイラつく鉾先になっていたのは言うまでもなかった。
そんな感じのまま、6年生になった。
さわとはクラスが分かれてしまった。
クラス発表の前に担任発表があった時点で、オレは一緒は無理だと、覚悟を決めてはいた。けど、やっぱりガッカリだった。
担任は2人とも、5年の時と同じだった。つまり、校務主任の先生が2組の担任だったのだ。
オレとそのは前期の役員になってるから、もう絶対、レンとさわは2組じゃん。レンとオレが同じクラスになる事は無いだろうから、オレは1組確定。そんで、絶対2人でクラス委員させられるでしょ。あー、もう!週一の全校朝会の度に2人が並んでる姿を見る羽目になるなんて…役員、全力で拒否すれば良かった。
そして、そんなオレの考えは全部当たってしまった。
リュウヘイもオレと同じ1組で役員をやっていたから、朝会終了後にはいつもボヤいていた。
5年の時は、リュウヘイを密かにけしかけて2人の邪魔をさせていたのだが、これからはそれも出来ない。たまにリュウヘイが緑川から得る情報を、隣で素知らぬ顔で聞くくらいだった。
唯一の楽しみは、廊下で会った時に、さわに飢えてるリュウヘイを使ってちょっかいを出させ、
「もー!ジュンペイ、リュウヘイをどうにかしてよ〜」
と、さわがオレに助けを求めてくる事だった。
そんな切ない毎日を過ごしていたある日。
野球の練習を終えた午後、緑川が珍しくリトルリーグの練習が無いから遊びたいと言い出し、タツヤとユーヤとオレの4人で遊ぶ事になった。
サッカーや野球をして遊び疲れて休憩していた時、緑川が、
「なぁ、タツヤってミオが好きだって聞いたけど、やっぱそうなの?」
と言い出した。タツヤは、
「えっ!誰が言ってた⁈」
と驚いたが、オレは正直、みんなそう思ってるだろうなぁと思った。タツヤはミオには無駄にちょっかいをかけているからだ。
この話題を機に、好きな人を言い合う流れになってしまった。ジャンケンで負けた奴から言う事になって、オレは最後に言う事になった。
1番はタツヤで、やっぱりミオだった。次はユーヤだった。
「オレはその。ジュンペイいるから望みはないけどね!」
ユーヤはそう言ってオレを見た。オレは、何とも居た堪れない気分になった。次は緑川だった。
「オレ、さわ。」
びっくりした。正直、シイだと思っていたのだ。みんなそうだったようで、
「あー、オレはだいたいシイなんだけど、今はさわなんだわ。」
と、緑川は言った。珍しく照れていた。
「ジュンペイはやっぱり、その?」
タツヤが聞いてきた。緑川がさわだって言った事で、ちょっと言いにくい気持ちになってしまったが、
「いや、実はオレもさわ。」
と伝えた。みんな予想以上に驚いた事に、オレは驚いた。
「でもさ、2人には悪いけど、さわとレンの間に割り込むのって、どう考えても難しくね?」
タツヤがそう言うと、
「割り込むとかってゆーか、ジュンペイはさわワールドにハマっちゃったんだよ。」
と、緑川が言った。ユーヤとタツヤは、
「ワールド?」
と聞き返した。
「そ。あいつ独特のワールド。リュウヘイなんてドップリだよ。オレはたまにワールドにはまっちゃうんだけど、」
緑川はそこまで言うとオレの方を見て、
「たぶんジュンペイも、ドップリだな。」
と言って笑った。ユーヤとタツヤはまだ、?って感じだったけど、オレには良く分かった。
「でもまぁ、そのとジュンペイだって同じ感じなのに、ジュンペイは実はさわって言うじゃん。もしかすると、もしかするかも知れないな。」
と、ユーヤが言った。
本当に、そう願いたい。
そして、その相手がオレであって欲しいと、強く思った。