第4章:金
「ふわぁぁぁふぅ…」
蘭呶は目を覚ました。何だかんだでアレから1週間が過ぎようとしていた。今日は祝日で学校は無い。
あの日から蘭呶は玲夢と学校で会っても挨拶くらいしかしなかった。
自分から話そうともしないし、向こうからも話そうともしてこなかったからだ。
蘭呶はいつもの様に無言モード全開で過ごしていたので誰も蘭呶と話をしようと思わなかったのか、蘭呶はここ1週間は孤独に学校生活を送っていた。
放課後になれば、林間学級の打ち合わせを着々と進めていた。
とりあえず、明日から林間学級が始まり2週間もの間、毒蛇島と言う所で過ごさなくてはいけなくなった。
一通りの荷物はまとめて、部屋の隅に置いてある。何しろ14日も滞在なので、荷物もかなりの量があった。
「後は何を用意すれば良いんだっけ?」
ボリボリと頭を描きながら荷物を見る。
旅のシオリには、生活必需品とお菓子300円分(バナナは含まれません)と書いてある。
「バナナなんて持ってたら、黒くなっちゃうじゃん」
一人でシオリにツッコミを入れる。
蘭呶の今日の目的は、お菓子を300円分を買うこと!今日、暇な時間を潰すには持ってこいな目的である。
「さて…と」
目的も決まった事なので蘭呶はベッドから飛び降りると机の上にある豚さんの貯金箱に近寄る。
豚さん貯金箱を手にとり、振るとチャリンチャリンと音がする。
「よし…300円くらいはあるな」
呟き、豚さん貯金箱をまた机の上に戻した。
そして隣の赤い昔のポストの形をした貯金箱を手に取ると、お金を入れる穴を下にして立てに振ると100円玉が3枚落ちてきた。蘭呶はそれを拾い財布に入れる。
全く貯金箱としての機能を果たしていない貯金箱。それよりも、豚さん貯金箱を確認した意味はあったのか…謎は深まるばかりである。
蘭呶は私服のまま寝ているので着替えをしないで階段を降りた。
今日は食卓には寄らなかった。起きたのも昼過ぎなので、特にお腹が空いてると言う訳では無い。蘭呶はそのまま一直線に玄関へ向かい外へ出た。
商店街へは歩いて10分ほどの所にある。そこに、行き付けの駄菓子屋がある。300円もあれば、結構一杯買えるからだ。
蘭呶は気分が良いのか鼻唄なんか歌いながら歩いていた。玲夢の家の前を通る時に、家の様子を伺う。人っ子1人居ない様に静まっていた。
「出掛けてるのかな…」
玲夢が居ても誘う気0なのだが、とりあえず呟きまた歩き出した。
商店街に着く頃には、まだ春の始まりなのに初夏の様な暑さで蘭呶は汗だくになってうた。
そして商店街の少しハズレにある小さな駄菓子屋に足を踏み入れた。
この店は先代から受け継いで来た店で、昔はBARを経営してたらしいが、不況の波に飲まれて今は駄菓子屋をやっている。23代目の主人のボケが始まり、今でもグラスを研く姿が時々見られる。
それはそうとして、蘭呶は店の中に入った。
中は殺伐とした店でなかなか広い。何故かレジが置いてある所にカウンターがあり椅子が2個だけ置いてある。
大昔に若い男女がこの店で出会い、階級制度がある中、周囲の反対を押しきり身分の違う2人は結ばれたそうだ。
その記念にいつまでも、このカウンターとこの椅子は絶対に廃棄しないと言うらしい。
そのカウンターの上の壁には見たことの無い花が押花で飾られている。
もう、花びらの色は茶色く褐色され元の色は分からないが形はとても珍しい形をしていた。
額縁の下に『クルシスの花』と書かれている。花の名前であろう。とても珍しいその花は何処に咲いているのだろう…。
店に並べられた駄菓子を見ていると、店には先客がいた様だ。駄菓子が並べられた棚の後ろから、声がする。
何処かで聞いたことのある声…蘭呶は棚の後ろを覗き込んだ。
陸と大地が、駄菓子を見ながら言い争いをしていた。
「大丈夫だよ!300円をちょっとオーバーしたって気づかれないって」
と陸
「駄目だよ…消費税込みで300円以内だから」
と大地
どうやら、消費税分の差額で言い争いをしているらしい。
蘭呶は巻き込まれない様に静かに戻る。面倒な事は嫌いなので…
ため息をついて後ろを振り返ると、目の前に人影が立っていた。
「あれ?蘭呶じゃん!あなたもここにお菓子を買いに来てたの?」
零だ!零はかなりの大きな声で話す。
蘭呶は静かにしろとなだめようとしたが、零の声を聞き陸と大地もやってきた。
「おぅっ蘭呶!聞いてくれよ!そしてこの馬鹿に言ってくれないか?消費税分はオーバーしても大丈夫だよな!」
蘭呶にとって一番したくない話題…。
「な…なぁ、蘭呶。消費税込みで300円だよな!」
別にどちらでも良い事だ。消費税分オーバーしようがしまいが…
「どちらでも良いんじゃ無いの?」
蘭呶より先に零が答えた。
ナイス零!蘭呶は心の中で零を誉めた。
「ど…どちらでもって、キチンとやってくれないと僕的には落ち着かないんだけどな」
少しイライラさせながら、大地が言う。
コイツA型か?蘭呶は思った。
「じゃあよぉ!お前ら3人で多数決を取ってくれよ」
と陸は蘭呶らを指さした。
3人?蘭呶は不思議に思う。今、この場には零と自分しか居ない…蘭呶は辺りを見回すと零の後ろに玲夢が立っていた。
玲夢は蘭呶と目が合うと小さく手を振った。
「よ…よし!じゃあ、蘭呶達は3人で多数決を取ってくれ。どちらでも良いは却下な」
大地は言うので、渋々蘭呶は女子2人に向き合う。
「消費税込みで300円以内が良いと思う人〜」
少し投げやりに蘭呶は言ったが誰も手を挙げない。
「よしっ!決まったな!0対3で消費税分はオーバーしても良いだ!」
陸が仕切るのでみんなは賛成をした。蘭呶的には、本当にどちらでも良い問題だが…。
「よし…くだらない抗争も終わった事だし、林間学級のお菓子を買うか」
蘭呶は呟くと、最初に見ていた駄菓子の棚を見始めた。他4人も散々になり好きなお菓子を見定める。
しばらくして、蘭呶の籠の中に『さきいか』や『スルメ』などの駄菓子が詰め込まれていく。
実にオッサン臭い高校生…。その内、ビールとかも入れそうだ。
蘭呶は一通り棚を見て、それからレジに商品を持っていった。
店の奥からは、90歳近いバアサンが出てくると1つ1つ商品を見てはレジに金額を打っていく。
「293円だよ」
全ての商品をレジに打ち込みバアサンは蘭呶を見たので、蘭呶は財布を出すと1000円札で払う。
朝、ポストの形をした貯金箱からお金をだしたのは何だったんだろう…。
蘭呶は確かに300円を財布にしまったが、彼の財布には既に1000円札が入っていた…謎は深まるばかりである。
お釣りを受け取りお菓子を持つと蘭呶はさっさと店をでようとするが、あっさりと零に見つかりみんなの買い物を待たされる。蘭呶は外に出てため息をついていた。
数分後に、陸と大地が出てくる。
それから10分後に玲夢が出てきた。
更にそこから数十分後に零が出てくる。
「いやーお待たせだね!色々見てたらみんな欲しくなっちゃってさ」
満面の笑顔で零は自分の買った袋を持ち上げた。
「祝日にみんな集まるって珍しいじゃん?どっかでお茶でもしてこーよ」
珍しいも何も高校生活初めての祝日なのだが、誰もツッコミはしなかった。
「えぇー面倒くせぇ〜!俺はパスだな!帰ってモンキーハンター3やりたいし」
陸は叫んだ。蘭呶も正直面倒臭いのだが、家に帰って何もしないのと玲夢(他数名)とお茶をするのだったら、迷わずに玲夢(他数名)とお茶を取る!
「ぼ…僕もいいや。センター試験予測問題をしなきゃいけないし」
センター試験予測問題だぁ?蘭呶は表には出さずに驚いた。この男…どこまで勉強の虫なんだろうか…。
「えぇっ!いきなり2人消えちゃうの?んー…、じゃあ玲夢と2人で行きますよーだ!」
零は陸と大地にアッカンベーをすると、蘭呶の方を向いた。
「蘭呶も何か用事があんの?」
少し機嫌が悪い零に蘭呶は首を横に振る。
「ホントに!?蘭呶が来れば玲夢も喜ぶわ」
大笑いをしながら、蘭呶の肩を叩いた。
それと同時くらいに近くの家の庭で猫の喧嘩があったらしく、猫の威嚇する声が聞こえた。
ん?今、零は何を言ったんだろ?玲夢が何とかって聞こえた気がしたけど…。猫の鳴き声で部分部分しか聞こえなかったが、確かに零は玲夢が何とかと言っていた気がした。
「もう!零ちゃんたら、何を言ってんのよ!」
玲夢が顔を真っ赤にしながら、零に怒っている。玲夢には零の言葉が聞こえたらしいが…。
「なぁ、今、何て"言"ったんだ?」
蘭呶は気になり、零に聞いた。と言うより、力が自然に発動した。
「だから、玲夢が喜ぶって言ったの」
今度は、猫の威嚇する声に近所の犬が反応し一斉に吠え出した。
「えっ?"何"だって?」
蘭呶は再度、聞き出した。
「だーかーらー!玲夢が喜ぶって言ったの!」
零はかなりの大声で叫んだが、次は猫と犬の声に反応した烏が一斉に鳴き出した。
「"静"かにしろー!」
蘭呶はたまらずに叫んだ。合唱を始めていた動物達が一斉に鳴きやんだ。
ぜぇはぁと息を切らしながら蘭呶はまた零に視線を戻した。
「で…何て"言"ったんだ?」
「だからね、玲夢がフガフガフガ」
突然、玲夢が零の口を押さえる。
「ほら、何度も言うと恥ずかしいじゃん!もう良いでしょ」
恥ずかしい事なのか?蘭呶は思った。
零の言った言葉…玲夢が※※※※※のよ!何て言ったんだろ…。
蘭呶は気になってしょうがなかった。
後で零に内緒で聞こう…そんな事を思いながら、喫茶店を探しに行く2人についていった。
駄菓子屋は商店街から少し離れた場所にあったので、3人は商店街へと歩いていく。
「モンキーハンターって猿を狩猟するゲームでしょ?」
前を歩いていた零が振り向きながら、蘭呶に聞いてきた。
「いや…知らないんだけど」
聞いた事はあった。
友達同士や離れた友達と協力しあってデかい猿や小さい猿を狩って、冒険するゲームらしいが、実際に友達の居ない蘭呶にとってはどうでも良い話だった。
「何でよぉ!男の子はみんなやってるって陸が言ってたわよ」
「だって俺…持ってねぇし」
零は何故か怒り気味に聞くが、蘭呶にとっては消費税問題よりも本当にどうでもいい話
「蘭呶…もしかして、女の子だったりして」
今まで無口だった玲夢が話に乗り始める。
「俺がおん…」
な?と言いかけて言葉を止めた。蘭呶の頭の中で自分が女になる想像をしていたからだ。
「蘭呶どうしたの?急に言葉を止めちゃったりして」
そんな蘭呶に零はツッコミを入れてきた。
「い…や…何でも無い」
蘭呶は慌てて手をふり拒否をした。
「ほらっそれより見てみろよ」
蘭呶が指を指した先にあったのは、テレビカメラで何かを写しているテレビ局の人達が居た。
「えっ?何何?ドラマの撮影かな」
零は蘭呶に指さされた場所を見ると感嘆な声を上げた。
とりあえず蘭呶は誤魔化せた事にため息をつき、自分で指さした方向を見た。
「何か銀行を写してるみたいよ!馬ぶき君とか居るかなぁ!ねぇっ!ちょっとだけ覗いていかない?」
零はこちらの返事も聞かずに銀行の方へと走り出した。残された2人は顔を見合わせる。
「玲夢…どうしよっか」
「どうしようも無いよね」
2人はため息をつくと、零の後をついていった。
蘭呶は思う、もしドラマの撮影だったらすんなり入らせてくれるのか…。
少しだけ嫌な気がした。
何か回りに警察が多い気もするし…コレはひょっとしたら…
零が周りから何かを言われていたが、構わずに強行突破をして銀行に入っていった。蘭呶達は一瞬躊躇ったが、零を一人に出来ないので強行突破をして銀行に入った。
「…で、コレのどこがドラマの撮影なんだろ…」
蘭呶は呟いた
「だから!私達は、エキストラに選ばれたのよ!」
零が大きな声で言う。
「エキストラねぇ…両手両足縛られて、他の銀行員の人やお客さんと一緒に壁際に座らせられてるこの状況で、まだドラマの撮影と言い張るか」
蘭呶達の前には覆面をした男が銃を構えて見張っている。その他に、金を詰めてる男が3人と窓の外を見ている男が2人居る。
「どうみても、銀行強盗だろ?ドラマって言うか、ある意味ドキュメントドラマの撮影じゃん!」
蘭呶は零の方を向いて叫んだ。
「ドラマはドラマでしょ!この後に、馬ぶき君が助けに来てくれるのよ!」
「誰だよ馬ぶきって!ドラマなんてフィクションだろ?こっちはノンフィクションなんだよ!」
「お前ら静かにしろ!」
蘭呶達を見張っている男がイライラさせながら叫んだ。
「馬ぶき君は、仮面ロリオーに変身するのよ!」
「高校生になっても、仮面ロリオーなんか見んなよ!って言うか、あいつじゃあ、助けに来ないからっ!」
仮面ロリオーとは、6歳〜12歳くらいまでの女の子しか助けない変態な正義の味方?なのだ。
「大丈夫よ!最近になって、仮面シスコンって言う仲間が増えたから!私、次女だし!」
仮面シスコンは妹限定で助けにくる変態な正義の味方?なのだ。
「黙れお前ら!」
男が再度叫ぶ。
「零ちゃんも蘭呶も…今の状況で良く落ち着いてられるよね…」
零の隣で玲夢が呟くのが聞こえた。
「そんなのが来たら、強盗よりも先にそいつらを捕まえて欲しいよな」
「何でよ!ロリオとシスコンを馬鹿にしてるの?」
「当たり前だろ?ロリオとシスコンに何が出来るんだよ!」
「ロリオは『脳殺ビーム』で、シスコンは『お兄ちゃん出かけてくるけど、帰りに何か買ってこようか?アイスか何かが良いかなーキック』が出来るのよ!」
「長げーよ!長すぎだから、ただのキックだろ?」
忠告も聞かずに言い争う2人を見て男は天井に向けて発砲する。
パンッ
「お前ら、うるさいって言ってるだろ!」
流石に、零は声を押し戻した。
「この状況が分かってんのか?ったくよ…んっ?何だ?何か文句があんのか?」
男は蘭呶の方を見た。蘭呶はじーっと男を見ながら口を開いた。
「おしっこがもれる…」
男はえっ?と耳を傾ける。
「おしっこ!もれる!」
蘭呶は両足を縛られているのに、器用に立ち上がるとピョンピョン跳ねた。
「もれる!もれる!」
必至に我慢をする顔を作る。
「ボス!こいつ、小便がしたいらしいっすよ!便所に連れてきますね」
男は振り返りボスと呼ばれた男に言う。
ボスは片手を上げて返事をすると、男は蘭呶の足の縄を外すと便所まで連れていった。
・
・
・
便所から男だけが、出てきた。強盗も馬鹿では無いようで、出てきた男に銃を向けた。
「オイッ!ガキはどこにやった?」
強盗が男に銃をつきつけながら聞いた。
「いやぁ〜暴れたんで、殺しちゃいました…ドアを開ければ、死体が"見"えるハズですよ」
男は両手を上げながら、笑って答えた。
強盗の1人がドアを開けてまた閉める。そこで、蘭呶の死体が"見"えたからである。
「ちょっと!蘭呶に何をしたのよ!」
離れた所で零が叫ぶ。
便所から蘭呶が出てこない事に不思議に思ってだろう。
「あぁ?あのガキならコイツみたいに"消"えてもらったよ」
男は強盗の1人を指をさすと、ヒュッと言う音と友に強盗の1人が消える。
「うっうわぁぁぁぁ…」
仲間が突然消えてしまった事により、強盗達が慌てだした。
「落ち着け!落ち着いてここから"逃"げろ!」
男は仲間に命令をだすと、強盗達は一目散に銀行から走って出ていった。
外が騒がしい…多分、警察が強盗達を捕まえているのであろう。
銀行に残ったのは、人質と見張っていた男とボスと呼ばれていた強盗。
男はボスの方へ顔を向けた。
「くっくっくっ…やってくれたな!まさか、お前に『くちなし』の能力があったとはな!」
ボスは椅子から立ち上がると男を見た。
「頭に考えた事を漢字1文字で表せば、その言葉を聞いた対象は従う…ちっ厄介な能力を持ってるじゃねぇか!タダオ!」
ボスは男──タダオと呼ばれた──を指差す。
「ボス…もしかして俺の正体が分かって無いのか?」
タダオは聞いた。
「いや!分かっているさっ!お前は裏切り者だったんだな!」
ボスはタダオに言い返した。
「ちょっと!何、私を無視してんのよ!蘭呶はどうしたのよ!」
縛られたまま零が叫ぶのが聞こえるが、タダオは無視してボスを睨んでいる。
「なぁ、俺がここで一言何かを言えばアンタはどうなるか分かってるよな?」
「ああ…つまり、お前は人質を解放して…」
タダオはウンウンと頷いた。
「俺と一緒に金を持って逃げて、また1から始めようと言いたいんだな?」
「そうだ……んな訳ねーだろ!もうウルサイから"喋"るなよ!」
ボスは口にチャックがされる様に口を閉じた。
再度タダオが便所から出てくるとボスを連れて銀行から出ていってしまった。
「いい加減気づけよ…俺、タダオじゃ無いし」
そんな事を呟きながら、タダオはまた便所に入っていった。
しかし、またすぐに便所から出るとボスに一言だけ伝える。
「"動"くなよ」
そしてまた便所に入る。
数分後、再度タダオが便所から出てくるとボスを連れて銀行から出ていってしまった。
また外が騒がしくなる。
蘭呶はそれから数分後に便所からひょこっと顔を出した。辺りを見回す。
「零!アイツらは何処に行ったんだ?」
辺りを見回しながら、静かに大きな声で叫ぶ。
「知らないわよ!何か、揉め事があったみたいで皆、出ていちゃったの!」
「ええぇぇぇー(棒読み)」
蘭呶は驚く振りをして、人質の人達の所へ駆けて行った。
「って言う事は助かったのか俺ら!(棒読み)」
「そうみたいだけど…何で棒読みなの?」
鋭いツッコミが返ってくる。
「そ…そうか?棒読みみたいに聞こえるか?」
冷や汗をかきながら、蘭呶は言う。
「蘭呶!無事?怪我は無いの?」
縛られたまま玲夢は言う。
「えっ?いやぁ〜大丈夫だったよ。ほら、間に合ったし」
蘭呶は少し照れ臭そうにあさっての方をみた。
「いつまでもこんな所に居ないで、早く逃げようぜ?」
蘭呶はそう言うと、玲夢や零を含め他の人質達を縛っている縄をほどき始めた。
そんな中、警察がドンドンと入ってきた。
人質達も解放され、銀行から出ていく。外には、警察やらテレビカメラやら野次馬やらが沢山居た。
「ふぅ〜…今日はお茶は無しだな」
蘭呶は呟いた。
これから、色んな質問されたり大変そうだし…そう言えば、明日から林間学級だったな。今日、早く帰れれば良いのになぁ…。
そんな事を思いながら、人質達は救急車に乗せられて、その場を後にした。
余談なのだが、消えた強盗はそんなに効果が持続しなかったせいで、2時間後にまた同じ場所に戻ってきた。
まぁ、検証をしていた警察に逮捕されましたが。